営業主導の限界
業務システムの成否はベンダーやSEの技術力だけでなく、それを取り巻く環境に大きく左右されます。特に日本の商習慣において、システム開発プロジェクトには非エンジニアの営業担当者が介在することが一般的です。この営業担当者は必ずしもプロジェクトの本質的な成功を目的としておらず、短期的な売上や契約の獲得を優先する傾向があります。このような構造的な課題が、システム開発の品質や効率性に影響を及ぼしているのです。
職能分化の必要性
プロジェクトマネージャーとしてのSEの役割にも課題があります。欧米では明確な職能分化が進んでいるのに対し、日本のシステム開発現場では役割の境界が曖昧です。建築現場に例えるなら、設計士、現場監督、職人といった明確な役割分担がなく、関係者全員が「SE」という同一カテゴリーで扱われています。
この状況は責任の所在を不明確にし、プロジェクト全体の効率性を低下させる要因となっています。また、専門性の向上や適切なキャリアパスの形成を妨げる結果にもなっているのです。
システム開発の真の目的
システム開発プロジェクトにおける重要な問題点として、SEやベンダーのプロジェクトマネージャーがシステム開発自体を目的化してしまう傾向が挙げられます。本来、業務システムはビジネスの目的を達成するための手段であり、その文脈の中で適切に位置づけられるべきものです。
しかし、多くの場合、技術的な完成度や開発工程の遂行に注力するあまり、ビジネス価値の創出という本質的な目的が見失われています。このような視点の欠如は、結果として使い勝手の悪いシステムや、投資対効果の低いプロジェクトを生む原因となっています。
ビジネスとシステムの関係性を正しく理解し、両者を適切にバランスさせることが、プロジェクトの成功確率を高める重要な要素となるでしょう。
相互理解の必要性
一方で、システム開発を完全にSE任せにしてしまうことも大きなリスクを伴います。単にシステム開発プロジェクトの経験があるというだけでは、複雑な開発プロジェクトを成功に導くための十分な要件とはなりません。
特に、プログラミングの実務経験がない場合、SEやベンダーが直面する技術的な課題や制約を適切に理解することが困難です。成功するプロジェクトに必要なのは、システム導入後の具体的なビジョンと、それを実現するための技術的な理解の両立です。
このバランスを欠いたプロジェクトは、往々にして期待された成果を上げることができず、結果として組織に大きな負担を強いることになります。
まとめ
欧米企業では、システム導入による間接的な売上や利益の向上を管理する専門部門や役職が一般的に存在します。一方、日本企業では定量的な指標に基づく厳密な評価システムが重視され、数値化できない価値の評価や判断が難しい傾向にあります。このような文化の違いは、システム開発プロジェクトの進め方や成果の評価にも大きな影響を与えているのです。
中期経営計画を業務システムを統括するリーダーと共有するだけでも、非エンジニアには見えない方向性を修正できることがあります。ITがなければビジネスが成立しない今日では、とにかくプログラミング経験があり、ビジネスについても一定の知識のあるメンバーを責任者やアドバイザーに付けることをおすすめします。アタラキシアDXより。