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地獄の炎上プロジェクトでPMはどう振舞うべきか?

何も問題が起こらなければ、プロジェクトマネージャーの仕事は楽です。
何か問題が起こった時は腕の見せ所で、炎上プロジェクトになると地獄を見ます。
プロジェクトマネージャーの仕事は進捗や課題など管理することが主ですが、それだけではありません。プロジェクトを構成するのは人なので、雰囲気や空気感など目に見えないことが働きに影響するため、現場の雰囲気を作ることも重要な仕事です。いくら優秀なエンジニアが集まっていたとしても暗い雰囲気、重い空気感では、うまく進みません。
炎上プロジェクトは、氷山に衝突した豪華客船と同じです。沈み行く船に混沌とした状況でいることは地獄ですが、あの有名映画とは違い、まだ沈没が決まったわけではなく、働き次第では航海を続けることが出来るのです。そのためにプロジェクトマネージャーは何をすべきか。本記事では、炎上したプロジェクトで、プロジェクトマネージャーがとるべき行動について紹介していきます。

かんたんイラスト(記事を読む時間のない人へ)

炎上プロジェクトとは

システム開発におけるプロジェクトマネージャーのミッションは、プロジェクトを成功に導くことです。納期に遅れることなく、品質基準を満たして本番リリースまで漕ぎ着けることが最低限必要で、その上で開発ベンダーとして収支も合格点を取る必要があります。QCD(品質・コスト・納期)を満たすことが成功の条件となりますが、この3つの条件のうち一つでも目標から大きく乖離している状況が炎上です。
システム開発プロジェクトが、何の障害もなく進むことは稀で、必ずといってよいほど課題に直面します。その課題の数が多いと炎上に向かうことになり、次々障害物が現れるマラソンのごとく、まるで42.195km障害物競走のように苦痛で地獄のような状況です。必ず終わるというゴールが見えているのは良い方で、先が見えない、あるいはゴールに近づいたと思ったらゴールテープが逃げ去ってしまうことの繰り返しもあります。
これまでで一番キツかった炎上プロジェクトでは、今では確実に、昔でも大きな問題になるほどの長時間労働で、あまりの寝不足でクライアントへ報告しながら寝落ちしてしまったくらいです。ただそれ以上に苦痛なのは、クライアントとマネジメントからの矢のように鋭い「どうするのか?」の問いの連続で、日々どこへいても何をしていても対応を考えている状況で、思い出したくもないし、武勇伝として語りたくもありません。体力も精神力も自信のある鉄人でも耐えることが困難な地獄の日々は、二度と味わいたくない思い出です。

炎上プロジェクトでPMが真っ先にすべきこと

プロジェクトマネージャーにとって炎上プロジェクトは地獄ですが、メンバーにとっても苦痛です。炎上プロジェクトでは、プロジェクトマネージャーの役割は平常時と異なり、プロジェクト管理の教科書に記載されているような管理プロセスや運営方法はあまり役に立ちません。チームが崩壊しかけている状況では、何よりも土台を固めることが大切となります。


・場を落ち着かせる
誰がどんな役割か不明確になり、”なるはや”のタスクが無造作にメンバーに割当たっていきます。このような状況では、一人ひとりのメンバーが熱くなりがちで、その熱波はチームへ伝播して、プロジェクト全体が熱狂というか発狂状態になります。プロジェクトマネージャーは、何よりも場を落ち着かせることが重要です。


・交通整理
まるで10月末の渋谷のスクランブル交差点のように無秩序な状況です。右に行く人もいれば、左に行く人もいる。上に向かう人もいれば、下る人もいて、うまく交差できずにぶつかりあって、些細な衝突があちこちで発生します。この状況を回避するためには、警察官のように自ら交差点のど真ん中に飛び込んで手旗信号を振って交通整理することが必要です。


・道筋を示す
あまりの作業の多さに、何から片づけたら良いか、どこへ向かったら良いかすら見失います。一人ひとりのメンバーへ、あるいはチーム単位で、目指すべき方向性を示してあげることが大切です。先が見えない状況でも、ひとまず今週のゴール、それすらわからないようであれば明日のゴールを決めること、ゴールが無いよりはましです。

・明るくする
プロジェクトの雰囲気は悪くなる一方で、どんどん暗く重い空気が漂い、心身ともにどんよりしてきます。物理的にも雰囲気的にもプロジェクト全体を明るくするように努めることが大切です。

炎上の当事者であるプロジェクトマネージャーがこのような振舞いをできることは、精神的にも作業優先度的にも実質不可能です。立て直しを当事者のPMに期待することは、精神論としては理解できますが、現実的ではありません。また、PMO強化や実動部隊の追加投入という対策を考えがちですが、効果がないどころか余計にPMの負荷を高めることになって逆効果です。交通整理や道筋を示すといった清流化には開発の中身を理解した全体把握と先を見通せる能力が必要なため、プロジェクトマネージャー経験者を入れて、立て直しまではダブルPM体制とすることが最良です。

炎上プロジェクトを前向きにする行動5つ

クライアントへの謝罪、対応策の検討、マネジメントへの報告といった、謝罪と報告の1000本ノックをこれまで何度も経験してきました。炎上プロジェクトのPMは、クライアントとマネジメントからのプレッシャーをシャワーのように浴びながらも解決方法を模索しなければなりません。忙しく精神的にもきつい立場ですが、チームを引っ張るリーダーでもあるので、何よりも現場を前向きにすることが重要です。プロジェクト全体の空気が悪くなったら、立て直しは難しくなってしまいます。


1.戦う姿勢を見せる
プロジェクトマネージャーは、クライアントと開発現場との間で板挟みとなることがあります。クライアントの要求が理不尽な場合には、炎上の原因が開発側にあったとしても、開発の代表者としての毅然とした対応が必要で、現場が疲弊して潰れてしまう危険があれば、クライアントと戦わないといけません。クライアントと戦う姿勢をプロジェクトメンバーが見て、感じることで、一体感が生まれて結束力が高まります。開発現場の状況を無視して、クライアントの言いなりになることは、決してやってはいけません。

2.どう判断したか説明する
プロジェクトマネージャーには次々と判断が求められますが、現場を置き去りにした決断はうまくいきません。現場の負荷が高くなる場合には、納得して動いてもらわないといけません。どのように判断したかの理由の説明とともに、迷惑をかけることになるけど協力して欲しいと、プロジェクトメンバーに対してしっかりとお願いをすべきです。

3.感謝を言葉で伝える
頭で思っていても口に出さなければ伝わりません。障害の調査が難航している時に、やっとのことで原因特定した人には「よくやった、すばらしい!」と大きな声で叫び、プロジェクト全体で喜びを分かち合うことも必要です。個人の値千金の働きが全体に波及して良い効果をもたらします。大げさな演出と思うかもしれませんが、誰も傷つく人はいないので、やらないよりやった方がよいです。

4.古典的でも差し入れも有効
古典的な方法ではありますが、感謝の意として、ピザでも寿司でもたまには出前を取ってメンバーにご馳走することも良いでしょう。多少露骨ではありますが、言葉に表すのと同様に、感謝を表現することは大切です。プロジェクトルームに豪勢な出前や山盛りのお菓子があると、それだけでも少しは明るくなります。古典的だと思うかもしれませんが、大切なのは感謝の気持ちを形にしてメンバーに伝えることです。プロジェクトマネージャーはそのためにできることは何でもしたらよいのです。

5.チーム再編による活性化
すごく前向きに捉えると、ピンチはチャンスでもあります。炎上プロジェクトには、本来的なポジションを逸脱して、メンバーそれぞれに活躍のチャンスがあります。重大障害がいくつもある状況では、タスクフォースを立ち上げることもあり、そのリーダーに若手を抜擢することも出来ます。スキルやキャラクターを見る必要はありますが、普段よりは積極的に登用していくことが出来るため、本人も気付いていなかった能力が開花したり、新鮮なチームによって斬新な発想が生まれたり、新たな人間関係によるシナジー効果がでたりと、プロジェクトの活性化が期待できます。

まとめ

プロジェクトマネージャーひとりでプロジェクトを成功に導くことはできません。一人ひとりのメンバーが最高のパフォーマンスを発揮して、活躍してくれてこそ実現できるのです。そのためには、進捗や成果物の管理だけでなく、現場の雰囲気や人も気持ちや感情という目に見えないものにも心配りが必要です。特に炎上プロジェクトでは、平常時よりも注意深く向き合うことが大切です。
ここまで書いてきましたが、このような振舞いや行動が出来る人であれば、そもそも炎上させないと思います。逆に言うと、炎上させてしまうプロジェクトマネージャーにこのような行動を求めるのは無理なのかもしれません。
多くの場合、炎上プロジェクトには援軍が送り込まれます。開発当初からいた人は炎上の責任を感じて、辛い立場と苦しい気持ちです。もし助っ人として炎上プロジェクトに参加した時には、どんな立場であれ優しい行動をとって欲しいと思います。その思いは、地獄の中の微かな光となって救われる人が必ずいます。

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