Posted on

要件定義の流儀

システム構築における要件定義

システム開発において、すべての業務課題をシステムで解決しようとする考え方には大きな危険が潜んでいます。要件定義は確かにITプロジェクトの成否を決定づける重要な工程ですが、単にシステム化できる項目を洗い出して仕様に落とし込むだけでは不十分です。

実際、十分な時間をかけて要件定義を行ったプロジェクトでも失敗するケースが少なくありません。その主な原因は、システム化以外の解決方法の検討を怠り、すべてをシステムに依存してしまう考え方にあります。業務プロセスの見直しや運用ルールの整備、人材育成など、システム以外の方法で解決できる課題も多くあります。

また、システム化による効果を過大に見積もり、導入後の運用コストや保守の負担を軽視してしまうことも失敗の要因となります。要件定義では、システム化の必要性を慎重に見極め、費用対効果を十分に検討することが重要です。さらに、ステークホルダー間でシステム化の目的や期待する効果について共通認識を持ち、現実的な目標設定を行うことが不可欠です。

プロジェクト規模と要件定義の関係性

ITプロジェクトの規模によって、最適な要件定義の手法や詳細度は大きく異なります。大規模プロジェクトでは、開発の各工程で手戻りが発生すると多大なコストが発生するため、要件定義段階で十分な検討と合意形成が必要です。

一方、小規模プロジェクトでは、より柔軟なアプローチが可能です。アジャイル開発やプロトタイプ開発では、最小限の要件定義からスタートし、実際に動くシステムを早期に作り上げることで、ユーザーからの具体的なフィードバックを得ることができます。この方法では、要件の変更や追加を開発プロセスの中で柔軟に取り入れることが可能となり、最終的なユーザー満足度の向上につながります。

また、開発チームとユーザーが密接にコミュニケーションを取りながら、段階的にシステムを改善していくため、リスクを最小限に抑えることができます。ただし、この手法を採用する場合でも、プロジェクトの目的や予算、納期などの基本的な枠組みは明確にしておく必要があります。

要件定義における本質の見極め方

要件定義の質は、投入する時間の長さだけでは決まりません。むしろ、システムの本質的な目的や解決すべき核心的な課題を明確にすることが重要です。要件定義を進めていく中で、ユーザー側から出てくる要望や機能の間で矛盾が発生することは珍しくありません。しかし、これらの矛盾を解消することに注力するあまり、本来の目的を見失ってはいけません。

要件定義では、まずシステムの中核となる機能や目的を明確にし、そこから段階的に機能を拡張していく approach が効果的です。また、すべての要望を満たそうとするのではなく、優先順位をつけて取捨選択することも重要です。システムの複雑化を避け、保守性や拡張性を確保するためにも、本質的な機能に焦点を当てた要件定義が求められます。

さらに、将来的な変更や拡張の可能性も考慮に入れ、柔軟性のある設計の基礎となる要件を定義することが重要です。

ユーザーとベンダーの相互理解

要件定義の成功には、システム会社とユーザー側の双方向のコミュニケーションが不可欠です。単にユーザーの要望を聞き取るだけの一方通行のヒアリングでは、本質的な課題解決につながりません。多くのユーザーは最新のIT技術やその可能性について詳しくないため、既存の業務プロセスの範囲内でしか要望を出せない可能性があります。

システム会社の専門家は、単にユーザーの要望を鵜呑みにするのではなく、ITを活用した新しい解決方法や業務改善の可能性を積極的に提案する必要があります。また、要件を早期に固定化してしまうと、後工程で大きな手戻りが発生し、予算超過や納期遅延につながる恐れがあります。

そのため、プロトタイプの活用やフィージビリティスタディなどを通じて、要件の実現可能性や効果を検証しながら、段階的に要件を確定していくアプローチが推奨されます。システム会社とユーザーが互いの専門性を活かしながら、より良いソリューションを見出していく姿勢が重要です。

まとめ

本質的な要件をコミュニケーションによって、はっきりさせていく作業こそが要件定義と言えます。さまざまな視点から何度も繰り返し要件をなぞることで粒度が落ちていき、適切な要件定義書になることでしょう。何でもかんでもシステム化せず、オペレーションとの関係性を見合わせながら進めるのがおすすめです。

要件定義の粒度は状況により違いますが、アタラキシアDXが得意としているシステム開発のレンジは小規模~中規模です。零細規模、大規模は条件が揃っているベンダーを選ぶべきです。要件定義を行うITベンダー選びもぜひ当社にご相談ください。