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プロジェクトマネージャーに大切な「3つの心」

まだ若かった頃にシステム開発のプロジェクトマネージャーに抜擢されたことがあり、そのプロジェクトのメンバーは、一回りも年上の協力会社のエンジニアを含め、皆年上でした。しかも上司人は、二回り以上も年の離れた地位もふたつ飛ばしくらい上の人であったため、良く言えば任された、悪く言うと放置された感じで、やることになりました。
リーダーは、メンバーを率いて、目標に向かってチームをゴールへ導いていかなければなりません。それがミッションです。当然、ゴールを設定しないとスタートできませんし、そのゴールへ導くためのルートも決めないといけません。これくらいは、当時でもわかっていましたし、ゴールとルートということだとシステム開発は比較的明確なので分かりやすいです。
やるべき事はわかっていても、その時、プロジェクトマネージャーとして、どのように振舞うべきか、どのような心持ちであるべきか非常に悩みましたし、不安しかありませんでした。
今回は、システム開発のプロジェクトマネージャーとして、どのような心構えで向き合うべきか説明していきます。
システム開発に限らず、どのようなリーダーでも、プレッシャーの大小はあるものの、悩ましい局面は似たようなところがあると思いますので、参考になれば幸いです。

かんたんイラスト(記事を読む時間のない人へ)

現状と変化

もし、あなたが、プロジェクトマネージャーをしている時に、クライアントから無理難題を突きつけられたらどうしますか?

 ① 「対応させていただきます!」(即答)
 ② 「んー、そうですねー。おそらく大丈夫です。たぶん・・・」(曖昧)
 ③ 「対応は難しそうです」(拒絶)

どれもプロジェクトマネージャーにふさわしい答えだとは思えないです。
システム開発プロジェクトは、クライアントが実現したいことを叶えるために進めていることなので、クライアントの希望に応える気持ちは大切ですが、一方で、開発チームの体力やスケジュールも考慮しなければいけません。
 ・開発チームの体力や状況を考えずにクライアントの言いなりになることは駄目です
 ・曖昧な回答は、どうしたら良いか分からず、皆で迷子になります
 ・対応可否を考えもせずに断ることはクライアントとして不満でしょう
クライアントの希望に応えるために、開発チームとしてどうしたら出来るか、その変化をどれだけ許容できるかを考える必要があります。このことを考える時のベースとなるのが、”現状”と”変化”です。
現状を知らないと、何をすれば良いかはわかりません。スポーツでも、自分の技術力を無視していきなり大技はできませんし、今日の体調を知らずに無理をしたら怪我をします。
武井壮さんが、以前テレビでこんなことを言っていました。「スポーツをやっている自分の姿は見ておらず、頭の中で思っている動きとずれていることがある。自分の体を頭で思った通りに動かすための軸を知ることが大事。」つまり、軸があるからずれがわかるということだと思います。
システム開発で言えば、この軸となるのは、開発チームの”現状”で、クライアントの希望に応えるために必要なことが、その現状に対する”変化”として考えることができます。どれだけの変化が必要で、その変化に耐えられるのかを客観的に考えて、保守的にいくか、少しチャレンジするかなどを判断することがプロジェクトマネージャーとして大変重要となります。

プロジェクトマネージャーに大切な「3つの心」

それでは、クライアントからの無理難題かもしれない要望を受けた状況を例として、プロジェクトマネージャーとして持つべき「3つの心」について説明します。

1.メンバーを子どものように思う「親心」

システム開発のプロジェクトチームは、人と人との集まりで、個々の力を合わせて一つの目標に向かって突き進む集合体です。その目標を目指す過程には当然、苦難や試練がありますが、時に個々のメンバーの考え方や気持ちが乱れようと、リーダーは軌道修正をして進めないといけません。分かりやすく極端に例えると、チームは言わば家族のようなものなのです。プロジェクトチームを一つの家族だと考えると、プロジェクトマネージャーはその親であり、メンバーは子どもです。
家族が何かしらの危機に直面すれば、親は真っ先に対処を考える責任があるし、どうすれば子どもを守れるか考えますよね。家族だけで対処することが難しいとわかれば、親戚や友人に相談に行くことがあるかもしれません。親として、当たり前に行うことです。子どもが誰かから怒られるようなことがあったら、まずは、何があったのか、なぜそのような行動をとったのかなど詳しく事情を聞き、しっかりと事実確認をした上で、悪いことであれば謝りますし、悪いことでなければ、謝る必要はありません。
プロジェクトメンバー一人ひとりを子どものように思い、親として正しく対処すること。
過保護も良くないし、放置や無関心も良くないし、無理し過ぎも良くない、得手不得手や性格を踏まえつつも、程よいチャレンジを経験させたい、成長してもらいたい、という思いをもってプロジェクトメンバーとしっかりと向き合い会話して思いを伝えていくこと、その上でリーダーとして取るべき方向性を判断することが必要です。

2.クライアントから嫌われることを「恐れない心」
クライアントにいつもいい顔をしてしまう人、ついつい格好つけてしまうプロジェクトマネージャーを、これまで沢山見てきました。
冒頭の質問に対して、①「対応させていただきます!」と即答するタイプです。
根底にあるのはやはり、「クライアントから嫌われなくない」とう一心でしょうか。
そもそも、クライアントから突きつけられた無理難題について一人で判断するのは大問題です。検討する時間が必要ですし、開発メンバーの意見を聞かずに答えられるはずがないのです。「検討した上で回答させていただきます」が正しい答えです。
また、検討の結果も、率直に伝えるべきです。断る場合には、「困難です」ではなく、「無理です」としっかりと断るべきです。適切に言うと、「プロジェクトマネージャーである私が無理と判断しました。」ということです。
やることが良いことでもなく、断ることが悪いことでもないのです。
なぜそう判断したのかを伝えるだけです。
クライアントに嫌われることを、必要以上に恐れる必要はありません。出来もしないことを約束する方が良くないのですから。
ただし、無理な理由は、開発チームの現状をベースとしているはずです。つまりその現状の制約が前提となっているので、その制約を外したらできるやり方はあるかもしれないというのは、クライアントと一緒に考えるべきかもしれません。

3.メンバーからの反発を受け止める「広い心」
私がこれまで見てきた中で、ひどいプロジェクトマネージャーは、クライアントから嫌われたくない一心で「できます!」的な発言をして、開発現場に戻ってプロジェクトメンバーから不満が出たら「もう言っちゃったよ、いいからやれよ」と怒りながら言った人です。
あまりにも無責任で、これはプロジェクトマネージャー失格です。外面がいい人に限って、内部には厳しかったりするものです。こんなプロジェクトマネージャーは、クライアントにとっても不幸を招きますし、開発メンバーにとっても苦痛でしかなく、気持ち良いのはプロジェクトマネージャー本人だけであり、もはやひとつの害でしかありません。
それなりの人数となるプロジェクトでは、開発メンバー全員の意見が同じということはありません。メンバーから文句や不満が出ることもあるでしょう。反対意見に対しては、しっかりと判断した理由を論理的に説明することが大切ですし、それでも、反発が残ったとしても、その反対した者を攻めるのではなく、「広い心」を持って受け止めることが大切です。

まとめ

今回は、プロジェクトマネージャーとしての大切な「3つの心」について説明しました。プロジェクトマネージャーだけでなく、組織の長としては当たり前の心構えでもあります。
また、対応するにしても、断るにしても、それは、プロジェクトマネージャーの判断だということです。技術的、物理的、体力的、金銭的いろいろな側面で対応可否を評価する必要はありますが、最終的には、どう判断したか。ということです。
判断することがプロジェクトマネージャーの仕事でもあるので、当然のことですが、その判断を、どういう気持ちでするか、その判断の結果をどういう心で伝えるか、その反応をどういう心持ちで受け止めるか、その局面における心構えです。
なお、冒頭の若かった頃にシステム開発のプロジェクトマネージャーに抜擢された際の話ですが、その頃は3つの心がけにも気づけていなかったのですが、一つ思っていたことがあります。どうせ放置されるのであれば好きにやろう、メンバーが皆年上なことも自分が年をとっていけばなくなっていくので今だけの経験だと思い、「中小企業の社長」になった気持ちで取り組みました。

出典:柴田秀夫@ARAKADO※転載は筆者承諾済