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「報告が遅い」と嘆く前に疑うべき3つのこと

報・連・相、この中で仲間外れがあります。どれか、わかりますか?
社会人であれば誰もが知っている報連相の中でも、報告は、ビジネスにおける重要なコミュニケーションのひとつです。入社数年は報告する側でしかありませんが、役職が上がって中間管理職にもなると、報告を受ける立場にもなります。
その報告において、内容はさておき、”遅い”というだけでお叱りを受けることがあります。その理由は、たいていの場合、遅いことで判断が遅れ、そのせいで影響が広がり、より大きな問題になってしまう可能性があるからです。実害が出て怒られるのは仕方ないですが、可能性に言及されて叱られ、ひいては再発防止策まで実施しなければならないことは、非常に勿体ないです。システム開発プロジェクトは、ただでさえトラブルが付き物なので、報告遅れによる余計な対応を増やすことは出来れば避けたいです。
速やかに報告を上げることを誰しも理解しているにもかかわらず、多くのプロジェクトで報告遅れによる問題が発生しています。今回は、なぜ報告遅れが発生してしまうのか、どうすれば無くすことができるのか、について説明します。

かんたんイラスト(記事を読む時間のない人へ)

報告を正しく理解している人は意外と少ない

さて、冒頭の仲間外れの答えは、もちろん”報告”です。報告の何が他と違うか、それは、報告だけ主体が相手なのです。連絡はこちらが伝えたいことで、相談もこちらが考えていることや悩んでいることですが、報告は、相手が何かを判断するために行うものです。システム開発プロジェクトのPM支援で参画すると、プロジェクトマネージャーが実施内容を報告していて驚くことがあります。実施した内容を伝えることが報告ではありません。中堅以上の社員になっても、報告を正しく理解している人が少ないことに愕然とします。報告の目的は下記の2つです。
・見通しを示す
・判断材料を提供する

報告を受けた上司は、示された見通しを評価して、そのまま進むか、軌道修正するか判断します。また、見通しがなくても、報告内容から計画の見直しや対策を検討しようと考えています。つまり、その時の状況、具体的には、計画通りに進んでいるか遅れているか、推進を阻害する課題に直面していないか、この先のリスクはないか等、この先どうするかの判断材料を提供することが報告です。

報告に大切なのは内容とタイミング

政治や芸能界におけるバッドニュースは、内容もさることながら、報告タイミングが遅いことでも叩かれています。これは、ビジネスの世界でも同様です。システム開発プロジェクトの例を出すと、重大な障害を定例の進捗会議で報告すると、「これは、いつ発生したものか?」と問われ、3日前の場合には、「なぜすぐに報告をあげなかったのか」「この3日間、何をしていたのか?」と詰められることがあります。問題が大きい場合には、レポートラインが機能していない、管理体制がなっていない、コンプラやリテラシーの基本教育がなっていないなど、根本的な事に疑念を抱かれてしまい、社をあげた再発防止の取り組みが必要になることがあります。
いつの時代、どんな仕事でも、報告は、内容とタイミングが重要です。そして、このふたつは比例しており、重大な内容であればあるほど、早い報告が求められます。

報告が遅くなる理由

「大きな問題は早く報告する」社会人1年目でも知っている働く人の常識だと思います。それでも報告が遅くなってしまうのには理由があります。
・パニックになった
問題を起こした当事者は、大きな問題であればあるほどパニックになります。その瞬間は報告よりも事態の収束にエネルギーを注いでしまうのは普通のことです。
・臆病であった
報告の重要性を認識していたとしても、叱られることを恐れて、準備を整えてから報告したい気持ちもわかります。
・早く報告する必要性を感じていなかった
事の重大さに気が付いていない、または報告の必要性を感じていなければ、遅くなるのは当然です。

上に挙げた理由からわかること、それは、どれも報告をする個人の気持ちや思いに頼っていることです。「大きな問題は早く報告する」という常識は、明文化されたものではなく、暗黙のルールのため、問題が重大か軽いか、何日であれば早いか遅いか、これは人によって捉え方が違います。そのため、報告をする側と受ける側とでギャップが生じると、お叱りを受けてしまうのです。ビジネスにおいては、レポートラインが決まった中での報告がほとんどなので、このギャップが生じるのには、報告を受ける側、つまり、指示を出す側にも責任があるのです。

「報告が遅い」と嘆く前に疑うべき3つのこと

「指示が雑」と言われてハッとする人は、まともです。
雑というのが、どういう意味で、何を求められているかわからない人は、リーダーに相応しくないと上司から思われて、このままだと昇進は難しいかもしれません。
ビジネスにおける日常的な報告は、レポートラインに基づくものなので、上の指示に従い報告を行います。この指示の仕方によっては、報告が遅いという問題が発生する可能性が高くなります。報告を受ける立場の人は、「報告が遅い」と嘆く前に、以下の3つを疑ってみた方が良いでしょう。

1.具体的な指示ができているか?
これまでの経験から、問題を抱えたプロジェクトのリーダーは指示が雑です。逆にうまくいっているプロジェクトでは、指示が丁寧です。丁寧とは具体的ということで、適切なタイミングで報告を上げてもらうためには、非常に重要です。いつ報告することがタイムリーか報告を受ける側とする側が同じ基準を持っているか、どういう判断をするために報告を求めているか、指示する時点で認識を合わせることが丁寧な指示です。
例えば、「何かあったら報告を上げてくれ」「緊急なら電話してくれ」という指示は、一見よいリーダー的発言ですが、まったく具体的ではありません。言われた側からすると、「何かあったら」の「何か」はわからないし、「緊急」が「どんな時か」もわかりません。「何か」も「緊急」も、人によってとらえ方は違います。このような曖昧な指示は、極論すると何も指示していないのと同じで、むしろ駄目リーダーです。
正しい指示は、5W1Hを使って伝えること。
「何か」ではなくて、「調査が今日の17時までに完了しなかったら」や「14時の時点でテスト項目にNGが一つでも出たら」と伝える必要がありますし、「緊急」ではなくて「システムがダウンした時は」などのように、「いつ」「何が」「どのように」なったときに報告を出してほしい、と伝えるのが正しい指示です。

2.性格に合わせた指示を出しているか?
指示は、具体的であるべきです。とはいっても、丁寧な指示をするには労力がかかるため、毎回毎回では非効率にもなります。曖昧な指示は、報告する側に裁量がある一方で、具体的な指示は、ルールが明確で機械的です。必ずしも全ての指示を具体的にしなくても、指示を受ける人の性格を見極めて、出し方を変えることは有りです。
すでに何度か報告を受けていてタイムリーの共通認識を持てている相手であれば、曖昧な指示でも問題ありません。逆に、報告実績のない人、価値観の違う人、楽観的な人や臆病な人には、具体的な指示を出すべきです。

3.途中で確認するタイミングを設定しているか?
具体的に指示したからといって、自分の思っているタイミングで報告が上がってくるとは限りません。指示を出す時に、ある程度、リスク度合いはわかるはずなので、気になる作業には報告を待つのではなく、能動的に確認することが必要です。
大きな問題に発展する可能性がある作業の指示は、最終の報告だけでなく、途中に確認するタイミングを設定することで、報告遅れによる問題は回避できます。

まとめ

報告遅れにより問題が大きくなった場合、報告を上げなかったメンバーの責任ではなく、適切なタイミングで報告を受け取れなかった自分の責任と、リーダーは思った方が良いです。これまでに「メンバーが報告を即座に上げてくれなかったのが問題を大きくした原因です!」と堂々と言い放つ人がいましたが、リーダー失格、管理怠慢と言わざるを得ないです。
タイムリーに報告を受け取るために、丁寧な、具体的な指示が出来ていたのか、まずは自分の指示の仕方を振り返るべきです。
たいていの仕事はチームで行います。特に多くの人との共同作業となるプロジェクトにおいては、一つの指示で多くの人が動くので、出来るだけ丁寧な指示をすべきです。
ただし、丁寧な指示が機械的な良い面がある一方で、曖昧な指示は、報告をする人が考えるようになるため、成長に繋がる可能性があります。丁寧な指示と曖昧な指示、そのバランスは難しいところですが、丁寧な指示の大切さを知っておくことは必要です。

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