Posted on

仕事のできる人が持つ”ビジネス感度”とは?

以前、大きなプロジェクトの提案を任された時、必死に提案書を作り、プレゼンに向けて想定問答
を考え、かなり入念に準備をして挑みました。そのプレゼンの質疑で想定していなかった問いを受
け、回答に悩んでいると、同席していた担当役員が的確に答えてくれました。提案は任せてくれて
いたので、その役員は、提案の中身をほぼ見ていないにもかかわらず、まるで質問内容を事前に
知っていたかのような答えで、すごいと思ったのを覚えています。
なぜ答えられたのか不思議に思うとともに、その能力を得たいとも考え、二人で話す機会があった
時に、「どうして、あんな風に的確に答えられるですか?」と聞きました。すると担当役員は、
「おまえは、かなりの時間をかけて提案の準備をしてきたけど、俺は、クライアントのことを日々
相当な時間をかけて考えている。クライアントのことを考えている時間が違うんだよ。」
なんの話って感じでしょうか。でも、これが、仕事ができる人の所以だと、後々わかります。

ビジネス感度とは?

感度という言葉を辞書で引くと、「他からの刺激に感じる度合い・程度」とあります。
仕事のほとんどは、他人と関わりをもって行います。チームで取り組むこともあれば、お客様や取引先とやり取りをしながら進めることもあります。ビジネスにおける感度は、「”他人”からの刺激に感じる度合い・程度」と置き換えることができます。また辞書には、「電波・電流などを感じる度合い」との定義もあり、他人からの刺激は、必ずしも体感できるものに限らないと考えることもできます。
ひと昔前に「空気を読む」という言葉が流行りましたが、空気が、不特定多数の人の雰囲気や暗黙の常識に対して、ビジネス感度は特定の人の思いや考えです。
つまり、”ビジネス感度”は、「一緒に働く他人を感じる度合い」と定義できるでしょう。というか、勝手にそう定義しました。一緒に働く他人の感情や気持ち、口には出さない思いや考えを感じ取る能力です。

ビジネス感度のレベル

ビジネス感度にも、スマホが受信する電波のようにレベルがあります。
・アンテナ1本
感度は良くないが、感じとろうとする機能を備えている人です。このレベルの人は、一緒に働く他人が、どのような感情か、何を考えているかを感じとろうとしますが、何を考えているかまではわからない人です。そのため、相手の変化を感じとると、「何か気になることありますか?」と確認する行動をとります。
・アンテナ2本
そこそこ受信できる人です。相手の変化を感じ取ると、「これを気にしてますよね」と相手の心の内を当ててしまいます。さらには、「これを気にしていると思うので、こういうやり方はどうでしょうか?」と相手の思いの少し先を考えた発言ができます。
・アンテナ3本
相当レベルの高い人です。変化を感じ取る前に行動してしまいます。相手から「少し前から気にしていることがあるんだけど」と言われた時には、「あ、それ、やっときましたよ」と言えちゃう人は素敵です。
・圏外
感じる機能を装備していない人は、他人から言われたことに対して行動をとります。「彼は言われたことだけやる」「彼女は言われてから行動する」などの愚痴の対象となる人です。言われてもやらない人に比べたらましですが、感度の良い人に比べると、悪く見えてしまいます。

感度高く接すべき相手

システム開発のプロジェクトマネージャーで言えば、一緒に働く人は、プロジェクトメンバーであるITエンジニア、開発ベンダーのマネジメント、それにクライアントです。開発ベンダーのマネジメントはさておき、プロジェクトメンバーとクライアントは、どちらも感度をもって接すべき相手です。プロジェクトマネージャーであれば、クライアントに対して感度高く接すると、プロジェクトが効率的に進み無駄な作業が減るため、結果的にメンバーも楽になるので、どちらか優先するとしたら、クライアントです。
システム開発に限らず、ほとんどの人は誰かしらと関わりをもって仕事に取り組んでいると思いますが、感度高く人と接することは、相当のエネルギーが必要なので、特定の相手に絞っても良いと思います。
冒頭の担当役員は、クライアントに絞っていました。提案メンバーにはあまりエネルギーを注がず、クライアントに全集中していましたし、そう割り切っていると言っています。まさにその結果が冒頭の対応力にあらわれています。

ビジネス感度が高いと良いこと

”ビジネス感度”が高いと、一緒の働く相手を気持ちよくさせることが出来るので、仕事がうまく進められます。システム開発のプロジェクトマネージャーで言えば、クライアントの感情や気持ち、期待値を感じとることで効率的なプロジェクト運営ができるようになります。
・計画的に進められる
感度が高いと、クライアントの思いを汲み取ることが出来るので、危険な匂いを感じたら、「クレームがあるかもしれない、言われたら何と答えようか、何ができるだろうか」と事前に打てそうな手立てを考えます。このように備える場合は、自分の都合で計画的に作業を組み立てられますが、クレームを言われてからやる場合は、突発的に作業を差し込むことになってしまいます。やる内容は変わらないかもしれませんが、計画的と突発的の違いは大きいです。
・信頼関係を築ける
気になっていることに先回りした対応を繰り返せば、クライアントに安心感を持ってもらい、信頼へとつながります。信頼関係を築けていない場合は、多少の遅れや些細なトラブルでも不安感を招き、原因調査や対策検討など必要以上の対応を求められることになってしまいますが、信頼関係があれば、説明だけで済むこともあります。

ビジネス感度を上げる方法

「相手の立場になって考えろ!」というのは、仕事で良く聞く言葉です。とはいえ自分は相手ではないし、クライアントであれば会社も違い、四六時中一緒にいるわけでもない人の気持ちなどわかるわけがありません。
では、どうやって相手の立場で物事を考えられるようになるのでしょうか。
それは、想像力を働かせて、時間をかけて訓練をして、ビジネス感度のレベルを上げるしかないと思っています。
冒頭の担当役員がプレゼンで回答できたのは、クライアントのことを常に考え、接する機会があれば、単に相手の話を聞くだけではなく、事前に考えた問いをぶつけて答えを見つける努力をしていたのです。それを1000本ノックのごとくエネルギーを注いで繰り返し行った結果、神業とも言えるビジネス感度を習得したのです。

ステップ1:相手を知る
何の情報もなく相手の考えを知ることは、もはや超能力です。まずは、相手を知ることが必要です。相手の会社に入社した気分になり、相手の役職が何で、部下に何人いて、上司が誰で、その部署のミッションが何かを知りましょう。可能なら相手の会議予定も確認しちゃいます。採用面接や、部下の人事評価面談だったり、予算審議の打合せが入っていたり、会議予定は、相手の活動が良くわかります。定例会議の予定もわかるので、部内会議が毎週木曜に入っているなら、こちらから報告するならその前の水曜の方が嬉しいだろうなというのも想像が付きます。

ステップ2:想定問答を考える
恋人の誕生日プレゼントに何を贈ったら喜んでもらえるかと同じで、想定問題は、あくまでもやり取りがある場合に考えることです。近々、報告会があるなら、報告時の想定問答を考える。こういう報告をしたら、どういう指摘が返ってくるか、相手の立場で問いを考えます。例えば、システム開発で言えば、クライアントの利用ユーザーが販売部門なら、ネット注文が受付けられなくなったらどうするのか。工場なら、生産が止まることはないのか、不良品は出ないのか、検品はできるのか等の問いが想像できます。これを何回も繰り返し行うことによって確実に感度は良くなります。

ステップ3:答え合わせする
想定問答で考えたことの答え合わせです。
まずは問いの部分「こんなこと気になってますか?」と直球で確認します。問いが間違っていたら、答えが合っているはずはありません。まずは問いが正しいかの答え合わせを行い、問いが合っていたなら、「こういう対応をしようと思ってますが、したら嬉しいですか?」と答えを確認します。
最初のうちは10個中2個正解だったのが、繰り返すことで、マジシャンのごとく全問正解となり、ここまでいくと、全てを見透かされているかのように思われて怖がられます。そこまで来たら、もう答え合わせは不要でビジネス感度のレベルは、既にマックスに上がっています。

まとめ

課題を抱えるプロジェクトでは、プロジェクトマネージャーの感度の悪さを感じることが多いです。そのせいで対応が後手にまわり、クライアントの怒りを買っているように思います。
ビジネス感度は、信頼を得るために必要な装備です。信頼はビジネスの土台であり、信頼がなければ関係はぐらつき、いつかは崩壊してしまいます。
プロジェクトマネージャーにとって、ビジネス感度は、信頼を得てプロジェクトを成功に導くための武器となります。冒頭の担当役員が言っていたこと、当時はピンときませんでしたし、何かテクニックがあるものと思っていましたが、今では、相手のことをとことん考える大切さがよくわかります。たまに考え過ぎて、脳が沸騰しそうになりますが、考え続けることで沸点も高くなるような気もするので、考えることをやめてはいけないと思っています。

効率的なシステム開発や、あらゆる技術を利用したDX化はアタラキシアディーエックス株式会社までご相談ください!