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完璧な組織ではDXできなかった!?横串を管理するCRO

CRO:収益向上の司令塔

CRO(Chief Revenue Officer、最高レベニュー責任者)は、企業全体の収益を最大化することを主要な使命とする重要な役職です。特に米国では、このポジションの重要性が高く評価されており、多くの企業で不可欠な存在となっています。

現代のビジネス環境では、オンラインとオフラインの境界が曖昧になりつつあり、従来の販売チャネルの区分けが意味を失いつつあります。そのため、CROには、Webでの販売と実店舗での販売を統合的に捉え、両者のシナジーを最大限に引き出す戦略を立案・実行することが求められます。この役割を効果的に遂行するには、マーケティング、営業、カスタマーサービス、製品開発など、複数の部門を横断的に統括する能力が不可欠です。

そのため、CROには通常、大きな権限が付与され、経営陣の一員として重要な意思決定に参画します。CROの存在により、企業は一貫性のある収益戦略を策定し、市場の変化に迅速かつ柔軟に対応することが可能になります。さらに、データ分析やテクノロジーの活用を通じて、顧客のニーズをより深く理解し、パーソナライズされたアプローチを展開することで、収益の持続的な成長を実現します。

日本企業の縦割り組織の壁

日本においてCROという役職があまり普及していない背景には、多くの伝統的な企業に根付いている縦割り組織構造があります。この組織形態では、各部門が独立して機能し、部門間の連携が限定的になりがちです。

例えば、小売業では「実店舗」と「EC(電子商取引)」が別々の部門として運営され、それぞれに責任者が置かれることが一般的です。同様に、製造業では「営業」と「製造」が、飲食業では「接客」と「調理」が分離されています。この縦割り構造は、各部門の専門性を高め、効率的な業務遂行を可能にする一方で、部門間の壁を生み出し、全社的な戦略の実行を困難にする場合があります。特に、急速に変化するデジタル時代において、この組織構造は柔軟性に欠け、顧客のニーズに総合的に応えることが難しくなっています。

また、各部門が独自の目標を持つことで、全社的な収益最大化よりも部門単位の成果に注力しがちになり、結果として企業全体の成長が制限される可能性があります。このような状況下では、部門を超えた協力や情報共有が不十分になり、顧客体験の一貫性や効率的なリソース活用が損なわれる恐れがあります。

CROによる組織横断の変革

縦割り組織の弊害を克服し、企業全体の成長を促進するためには、部門を横断して変革を主導できる強力な権限を持つリーダーが不可欠です。日本では、この役割がDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の文脈で語られることが多いですが、本質的には全社的な収益向上を目指すCROの機能と重なる部分が大きいといえます。

CROの存在意義は、単なるデジタル化の推進にとどまらず、企業全体の収益構造を最適化し、持続可能な成長を実現することにあります。営利企業において、経営陣の最大の責務は売上と利益の拡大です。この観点から、CROは経営戦略の中核を担う存在として、各部門の活動を統合し、一貫した収益戦略を展開する役割を果たします。

具体的には、顧客データの統合と分析、クロスセル・アップセルの機会の特定、新規顧客獲得と既存顧客維持のバランス最適化、価格戦略の策定など、多岐にわたる取り組みを主導します。さらに、デジタルツールやAIの活用を通じて、営業プロセスの効率化や顧客体験の向上を図り、結果として収益の最大化につなげます。

このような包括的なアプローチは、縦割り組織では実現が難しく、CROの存在が企業の競争力強化に直結するのです。

部門の壁を越えた成長戦略

全社を挙げて売上を向上させる施策の立案と実行は、一見シンプルに思えるかもしれませんが、実際には複雑で困難な課題です。その主な理由は、各販売チャネルや部門がそれぞれ独自の営業目標を持ち、その達成に注力しているからです。

例えば、実店舗の責任者は店舗での売上に、ECの責任者はオンライン販売の数字に責任を負っています。この状況下では、チャネル間の協力よりも競争が生まれやすく、結果として全社的な最適化が困難になります。この課題を解決するためには、組織構造と評価システムの根本的な変革が必要です。

具体的には、「実店舗とECのどちらで販売しても」営業数字として差異がないような仕組みを構築し、全てのチャネルが協力して顧客価値の最大化を目指す環境を整える必要があります。これには、統合的な顧客データベースの構築、クロスチャネルでの在庫管理、一貫した価格戦略の実施、そしてオムニチャネル戦略の導入が含まれます。さらに、従業員の評価基準を個別チャネルの成果から全社的な貢献度に変更し、部門間の協力を促進する仕組みを整えることも重要です。

このような変革は容易ではありませんが、CROのリーダーシップのもと、長期的な視点で段階的に実施することで、真の意味での顧客中心の組織へと進化し、持続的な収益成長を実現することが可能となります。

まとめ

IT化するだけではDXとは言えないのは、組織や仕組みの変革も伴うからです。また、CROのポジションを用意するだけでもDXできません。なぜなら、権限も必要になるからです。レベニュー、つまり会社の利益と売上を真摯に追いかけることができるCROメンバーを起用しなければなりません。これからの会社経営はSEの先入観を捨て、適切なIT知識のある人員で組織化を考えることが必須です。

もし、イノベーションがなかなか進まないのは組織が完成しているからかもしれません。分断された責任者から出てくるシステム要件をまとめたところでDXはできません。ITを上手に使ってビジネス変革している会社は、部署を横断して発言権のある人物がいます。あるいは、発言力のあるPMOチームが構築されています。横串を見据えたPMOチームを構築するなら、意外と大きなプロジェクト変革でも活躍するアタラキシアDXにお任せください!