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職人気質「作りましょう!」に要注意

システム開発の特殊性と比較困難性

システム開発の特殊性は、開発前の比較が難しいこと、そして導入後の状況比較が困難である点に集約されます。多くの企業や組織がシステム開発を行う際、その成果や品質を客観的に評価することに苦心します。

開発前の段階では、完成後のシステムの具体的な姿や性能を正確に予測することが困難であり、複数の開発案や提案を比較検討する際に明確な基準を設けることが難しくなります。さらに、システムが完成し運用段階に入ってからも、その評価は容易ではありません。

例えば、多数の不具合や問題が発生したとしても、それが業界標準や一般的な状況であると説明されれば、ユーザーや管理者は適切な判断基準を失ってしまいます。結果として、本来であれば改善が必要な状況でも、それが「通常」であるとして受け入れられてしまう危険性があります。

この特殊性は、システム開発プロジェクトの成功率低下や、長期的な運用コストの増大につながる可能性があり、慎重な対応が求められます。

SaaS vs 独自開発:持続可能性の観点から

SaaS(Software as a Service)は、その豊富な機能と標準化されたサービス内容により、比較検討が容易であるという大きな利点を持っています。多くの企業が同じプラットフォームを使用することで、機能や性能、コストの比較が直接的に行えるため、意思決定プロセスが簡略化されます。

一方で、どうしても独自開発が必要な特殊業務の場合、その選択には慎重な検討が求められます。特に、労働人口の減少が続く日本においては、独自開発を選択することは長期的な視点から見て問題をはらんでいます。開発者の確保や技術の継承が困難になる可能性が高く、システムの維持・更新に支障をきたす恐れがあります。

さらに、グローバル化が進む現代のビジネス環境において、国際標準から外れた独自システムを使用することは、競争力の低下につながる可能性もあります。したがって、特殊業務であっても、可能な限りSaaSやパッケージソフトウェアの活用を検討し、カスタマイズによって対応することが望ましいと言えるでしょう。

フルスクラッチ開発の慎重な検討の必要性

ITエンジニアの世界では、長らくスクラッチ開発(ゼロからのシステム構築)が高い評価を受けてきました。この傾向は、技術力の証明や創造性の発揮の機会として捉えられ、多くのエンジニアを魅了してきました。しかし、この姿勢には大きな落とし穴が存在します。

未来のリスクを十分に考慮せず、または見通せないままにスクラッチ開発に着手してしまうケースが少なくありません。この背景には、短期的な成果や技術的挑戦への欲求が、長期的な維持管理の視点を曇らせてしまう現実があります。結果として、開発初期段階では気づかなかった、または軽視していた技術的負債が蓄積されていきます。これらの負債は、システムの拡張性、保守性、セキュリティなど、多岐にわたる問題として顕在化し、後の運用段階で大きな障害となります。

さらに深刻なのは、これらの問題が表面化しないよう隠蔽されながら開発が進められることです。このような状況下では、システムの真の価値や課題が正確に評価されず、結果的に組織全体に大きな損失をもたらす可能性があります。

フルスクラッチの落とし穴:隠れた維持コスト

システム開発において「一から作りましょう」という提案には、特に注意を払う必要があります。フルスクラッチでの開発は、一見魅力的に映るかもしれませんが、実際には膨大な維持費用が発生することを忘れてはいけません。この維持費は、単に金銭的なコストだけでなく、人的リソースや時間的コストも含まれます。

特に深刻な問題は、開発したシステムの維持や更新が、特定の個人の能力や知識に過度に依存してしまうことです。この状況は、組織にとって大きなリスクとなります。

例えば、キーパーソンが退職や異動した場合、システムの継続的な運用や改善が困難になる可能性があります。また、技術の進化や業務要件の変更に対して、柔軟に対応することも難しくなります。さらに、フルスクラッチ開発は往々にしてドキュメンテーションが不十分になりがちで、これが後の保守や拡張を一層困難にします。

したがって、フルスクラッチでの開発を検討する際は、短期的な利点だけでなく、長期的な維持管理の観点から慎重に判断する必要があります。可能な限り、既存のソリューションやフレームワークの活用を検討し、カスタマイズによって要件を満たす方法を模索することが賢明です。

まとめ

しかし、完成した後に使えないシステムであることが発覚することもよくあります。いつまでも不具合修正が終わらず、保守費用という名の瑕疵対応が延々と続いているケースがあります。すでに投入したシステム費用に加えて新しい機能を付け加えるということができなくなります。また、仮にベンダーを切り替えるにしても埋没費用(サンクコスト)効果で諦めきれないこともあると思います。

スイッチ先システム会社側からしても、ダメなシステムが導入された後、しかも残り少ない予算で、修正してほしいといわれても請け負えないのが正直なところです。あるいは何か不正をしなければ、異常な低価格では請けることができないでしょう。

失敗を上手に立て直すには、それなりの幅広い知見が必要です。そんなときは、一度アタラキシアDXにご相談ください。

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