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見えることが安心?念のため紙で残しておきましょうの真理



デジタル時代の紙依存

デジタル化やIT化が急速に進展する現代社会において、システムの導入が広く浸透しているにも関わらず、「念のため紙で残しましょう」「念のためプリントアウトして目視で確認しましょう」という声が後を絶たない状況が続いています。この現象は、単なる古い習慣の残存ではなく、より深い心理的要因に根ざしていると考えられます。

その背景には、ミスが致命的な結果をもたらす可能性への強い危機感があります。特に、金融取引や医療情報、法的文書など、高度な正確性が要求される分野では、この傾向が顕著に見られます。デジタルデータは目に見えず、時として不安定に感じられるのに対し、紙に印刷された情報は物理的な実体を持ち、直接確認できる安心感があります。

また、世代間のデジタルリテラシーの差も、この傾向に拍車をかけている要因の一つです。デジタル技術に不慣れな世代にとっては、紙ベースの確認作業が依然として最も信頼できる方法であり、組織内でその考えが根強く残っていることも多いでしょう。

しかし、この「紙の文化」は、業務効率の低下やコスト増加、環境負荷の増大など、様々な問題を引き起こしています。デジタル化の真の恩恵を享受するためには、この心理的な障壁を乗り越え、適切なリスク管理とデジタルツールの効果的な活用のバランスを見出すことが重要です。

対策の本質を見極める

ビジネスの現場で「念のため紙で」という声が上がる背景には、システムやそれを設計・運用するシステムエンジニア(SE)への信頼が十分に確立されていないという問題が潜んでいます。この信頼不足は、過去のシステム障害の経験や、技術的な理解の不足から生じていることが多く、組織全体のデジタル化の進展を妨げる大きな要因となっています。

確かに、重要なデータや情報を扱う上で、複数の対策を講じることは賢明な選択です。しかし、その対策が必ずしも紙への印刷や物理的な保管を意味するわけではありません。デジタルシステムにおいても、データのバックアップ、冗長化、暗号化など、さまざまな安全対策が可能であり、むしろ紙よりも高度な保護を提供できる場合も多いのです。

この状況を改善するためには、組織内でのデジタルリテラシーの向上と、システムの信頼性に関する正しい理解の促進が不可欠です。経営層から現場の従業員まで、全ての階層でデジタル技術の利点とリスクを適切に理解し、効果的な対策を講じる能力を養う必要があります。

同時に、システム開発側も、ユーザーの不安や懸念を真摯に受け止め、より信頼性の高いシステムの構築と、わかりやすい説明や透明性の確保に努めるべきです。相互理解と信頼関係の構築が、真の意味でのデジタル化の成功につながるのです。

SEが直面するデータ保持の課題

システムエンジニア(SE)の立場から見ても、「念のため」の対策が必ずしも最適な選択ではない場面が多々あります。その典型的な例が、データ削除の問題です。多くのシステムにおいて、データを完全に削除せず、論理削除という形で残しておくケースが頻繁に見られます。これは、将来的にそのデータが必要になるかもしれないという不安や、削除による予期せぬ影響を避けたいという考えから生じています。

しかし、この「念のため」のデータ保持は、しばしばシステムの肥大化や複雑化、パフォーマンスの低下を引き起こす原因となります。不要なデータが蓄積されることで、ストレージコストの増加やデータ処理時間の延長、さらにはデータ管理の煩雑化など、多くの負の影響をもたらす可能性があります。

また、データ保護やプライバシーに関する法規制の観点からも、必要以上にデータを保持することはリスクとなり得ます。例えば、EUの一般データ保護規則(GDPR)のような厳格な個人情報保護法制下では、不必要なデータの保持は法的責任を問われる可能性があります。

この問題の解決には、データライフサイクル管理の徹底と、明確なデータ削除ポリシーの策定が不可欠です。必要なデータと不要なデータを適切に判断し、安全かつ効率的にデータを管理する仕組みを構築することが重要です。同時に、システム設計の段階から、将来的なデータ削除や移行を考慮したアーキテクチャを採用することも、長期的な視点では有効な対策となります。

見えざる負債、技術の重荷

IT化やシステム導入は、必ずしも業務効率化に直結するわけではありません。むしろ、適切な管理や更新が行われないまま時間が経過すると、「技術的負債」と呼ばれる問題が蓄積していきます。技術的負債とは、短期的な解決策や妥協の積み重ねによって生じる長期的なコストや非効率性のことを指します。

多くの組織では、日々の業務に追われる中で、この技術的負債の存在に気づかないか、あるいは気づいていても対処を先送りにしがちです。しかし、放置された技術的負債は、想像以上に急速に膨らみ、システムの保守性や拡張性を著しく低下させ、最終的には大規模なシステム刷新を余儀なくされる事態を招くこともあります。

技術的負債の返済、つまりシステムの最適化や刷新には、まず現状の正確な把握が不可欠です。レガシーシステムの調査、コードの品質分析、パフォーマンス測定など、多角的な観点からシステムの健全性を評価する必要があります。その上で、短期的・中期的・長期的な目標を設定し、段階的に改善を進めていくロードマップを策定することが重要です。

このプロセスでは、単なる技術的な改善だけでなく、業務プロセスの見直しやユーザー教育も含めた総合的なアプローチが求められます。また、新たな技術的負債の発生を防ぐために、継続的なモニタリングと改善のサイクルを確立することも重要です。

技術的負債の返済は容易ではありませんが、適切に管理することで、長期的には大きな競争優位性につながります。IT投資を単なるコストではなく、ビジネス価値を生み出す戦略的資産として捉え、計画的に管理していくことが、デジタル時代の組織には不可欠なのです。

まとめ

重要なポイントは新しくIT化するだけではなく、どのようにして既存ITを活用するのか、ITを扱いきれているのかをまず確認すべきでしょう。システムを入れ替えたら、すべてが解決するわけではないので、この考えがあるなら改める必要があります。

実際にシステムを利用すれば入金確認処理が5分程度で終わるものを、1人が1ヶ月かけてすべてプリントアウトして目視している(そしてその人が評価されるという、、、)現場もありました。ITを効率的に導入した結果がDXなわけであり、DX化と表現にするとDXが目的になってしまっている感じがしますね。

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