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ERPパッケージシステム導入でなぜ失敗するのか

職人気質がもたらすERP導入の課題

ERP基幹系システムのパッケージ導入は、多くの企業にとって重要な経営戦略の一環です。しかし、グリコやユニ・チャームの事例に見られるように、導入時の障害によって深刻な問題が露呈することがあります。これらの事例は氷山の一角に過ぎず、実際には多くの企業が日常的に同様の問題に直面しています。

失敗の原因は多岐にわたりますが、その中でも特筆すべきは「職人気質」の存在です。日本の企業文化に根付いたこの気質は、時として過度のカスタマイズへとつながります。職人気質を持つ開発者は、パッケージソフトウェアの標準機能に満足せず、自社の業務プロセスに完璧に適合させようと努めます。

この姿勢は一見、顧客志向のように見えますが、実際にはシステムの複雑化や保守性の低下を招く可能性があります。過度のカスタマイズは、将来のアップグレードや他システムとの連携を困難にし、結果として企業の競争力を損なう恐れがあります。

職人気質を活かしつつ、標準化されたERPの利点を最大限に生かすバランスを取ることが、成功への鍵となるでしょう。

経営層と現場の利害対立

ERPの再構築プロジェクトは、多額の投資を必要とするため、経営層の意向が強く反映される傾向があります。この過程で、現場の生産性よりも経営指標の改善が優先されることも少なくありません。結果として、日々の業務効率が犠牲になるケースが見られます。

また、多くの人々が抱いている誤解として、パッケージシステムに独自のカスタマイズを加えれば、自社の業務に完全に適合させられるという考えがあります。しかし、この発想は本来のパッケージシステムの利点を損なう可能性があります。

パッケージシステムの真の価値は、業界のベストプラクティスを集約した標準機能にあります。過度のカスタマイズは、将来のバージョンアップや保守を困難にし、長期的にはコスト増加や競争力の低下を招く恐れがあります。理想的なアプローチは、パッケージの標準機能を最大限活用しつつ、真に必要な部分のみをカスタマイズすることです。このバランスを取ることで、効率的なシステム運用と柔軟な業務プロセスの両立が可能となります。

ERPプロジェクトの舵取り

ERPプロジェクトの開始時には、システムが支援する業務範囲を明確に定義することが重要です。しかし、多くの場合、この定義が不十分なまま開発が進められ、結果として「何でもできるシステム」を目指す方向に流されがちです。

当初は経営判断に役立つデータ収集が主目的であったにもかかわらず、長期にわたる開発過程で、DXや業務効率化など、様々な要望が現場から寄せられることがあります。これらの要望に対し、ITエンジニアは全てを実現しようと努力しますが、これが本来の目的からの逸脱や、プロジェクトの肥大化を招く原因となります。

このような状況を避けるためには、プロジェクトの範囲と目的を明確に定め、それを厳守する姿勢が必要です。新たな要求が発生した場合は、その重要性と影響を慎重に評価し、真に必要なものだけを取り入れる判断力が求められます。また、アジャイル開発手法の採用など、柔軟かつ迅速に変化に対応できる開発体制を整えることも一つの解決策となるでしょう。

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ERPと業務の共進化:適応の重要性

パッケージシステムの本質は、業界のベストプラクティスを集約した標準機能にあります。しかし、多くのIT部門は「自社の業務に合わせればいい」という考えを無批判に受け入れ、過度のカスタマイズを行う傾向があります。

実際には、パッケージシステムに業務プロセスを合わせていく努力も非常に重要です。これは単なる妥協ではなく、自社の業務プロセスを業界標準に近づけ、効率化を図る機会でもあります。確かに、「システムを導入したら業務負担が増してしまう」という現場の声は無視できません。しかし、IT部門はこれらの意見に適切に対応し、システムと業務の最適なバランスを見出す必要があります。

この過程では、現場とIT部門、さらにはシステム導入パートナーとの密接なコミュニケーションが不可欠です。短期的には業務負担が増加するように見えても、長期的には業務効率の向上や競争力の強化につながる可能性があることを、全関係者が理解し、共通の目標に向かって協力することが重要です。

まとめ

システムパッケージを業務に合わせてカスタムするのではなく、各署と業務を調整し、業務をパッケージシステムに合わせる努力もITエンジニアには必要です。ITエンジニアはプログラムだけしているだけでは本当の価値を発揮しません。エンジニア不足ではなくビジネスアナリスト(BA)不足なのかもしれませんね。

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