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SE常駐が必要なのは上流工程の情報のまとめ方に問題が

ユーザー側の情報整理力向上が鍵

SEの人種を問わず、とにかくSEを隣に常駐させてほしいという要望が生じるのは、現場でのコミュニケーションや情報のまとめ方に課題があることを示唆しています。ユーザー側が情報を的確にまとめることができていれば、SEがどこにいてもシステム開発には影響がないはずです。

この問題の根本には、ユーザー側の要件定義能力や業務フロー整理能力の不足があると考えられます。多くの場合、ユーザーは自社の業務を当たり前のものとして捉え、それをシステム化する際に必要な詳細な情報を見落としがちです。また、業務の全体像を俯瞰し、それをシステムに落とし込む際の優先順位付けや段階的な実装計画を立てることも苦手としています。

これらの課題を解決するためには、ユーザー側の情報整理力と要件定義能力の向上が不可欠です。例えば、業務フロー図やユースケース図の作成スキルを身につけることで、自社の業務をより客観的に分析し、必要な情報を漏れなく整理できるようになります。また、プロジェクトマネジメントの基礎知識を習得することで、システム開発の各フェーズで必要となる情報や決定事項を適切なタイミングで準備できるようになるでしょう。

このようなスキルを向上させることで、SEとのコミュニケーションがより円滑になり、SEの常駐の必要性が低減すると同時に、開発プロジェクト全体の効率化にもつながります。

オフショア開発の課題と常駐開発の台頭

これまでシステム開発において、上流工程とよばれる設計フェーズで設計書を作り、下流工程とよばれるプログラミング作業をオフショア開発するという方法が定番でした。しかし、どうしても設計書だけではプログラミングする開発者に要件を十分に伝えることができないため、隣にプログラミングする開発者を常駐させて設計者が細かく指示をする傾向が強まっています。

オフショア開発の最大の利点はコスト削減ですが、同時にコミュニケーションの障壁や文化の違いによる誤解、時差による進捗管理の難しさなどの課題も存在します。特に、設計書の解釈の違いや細かな仕様の確認に時間がかかることが、開発の遅延や品質低下につながることがあります。

これらの問題を解決するために、常駐開発が注目されるようになりました。開発者が設計者の近くで作業することで、即時的なコミュニケーションが可能となり、細かな指示や確認がスムーズに行えます。また、開発者が業務の文脈を直接理解することで、より適切な実装方法を選択できる可能性も高まります。

一方で、常駐開発にはコストの増加や人材確保の難しさといった新たな課題も生じます。そのため、プロジェクトの性質や規模、必要とされる開発スピードなどを考慮し、オフショア開発と常駐開発のバランスを適切に取ることが重要です。

設計能力の向上がプロジェクト成功の鍵

設計者が隣にいる開発者に対して細かく指示をしなければならない原因の一つは、設計者の設計能力が考えられます。もし、オフショア開発する会社側に、より優秀な設計者がいた場合は、うまくユーザー側が要件を設計者に伝えれば、設計能力が高ければスムーズに開発チームへも仕様を連携できるはずです。

設計能力の向上は、単に技術的なスキルだけでなく、ビジネス理解力やコミュニケーション能力、問題解決能力など、多岐にわたるスキルセットの強化を意味します。優秀な設計者は、ユーザーの要求を正確に理解し、それを技術的に実現可能な形に翻訳する能力を持っています。また、将来的な拡張性や保守性を考慮した設計ができ、開発チームに明確な指針を提供できます。

設計能力を向上させるためには、継続的な学習と経験の蓄積が不可欠です。最新の技術トレンドや設計パターンの習得、異なる業界のプロジェクト経験、そしてプロジェクト失敗からの学びなど、多角的なアプローチが必要です。また、ユーザーとの対話スキルを磨き、曖昧な要求を具体化する能力も重要です。

優秀な設計者の存在は、プロジェクトの成功率を大きく向上させます。彼らは複雑な要求を整理し、明確な設計書として文書化することで、開発チームの生産性を高め、品質の向上にも寄与します。結果として、常駐開発への依存度を下げ、より効率的なオフショア開発の実現につながる可能性があります。

グローバル人材活用の時代へ

日本の人口減とプログラマー職の人気低迷もあり、若くて人口が増えている新興国のほうが、「優秀な設計者」が多く見つけられるはずです。これは火を見るよりも明らかで、文系大学や専門課程を知らない日本人がエンジニアとして活躍する一方で、一流大学にて情報技術の専門課程を終えてきたベトナム人エンジニアに上流工程から任せることも検討しないといけない時代になっています。

グローバル化が進む現代において、人材の国籍にこだわることなく、最適な人材を見出し活用することが重要です。新興国では、IT教育に力を入れている国も多く、若い世代を中心に高度な技術力を持つエンジニアが育っています。彼らは最新の技術トレンドに敏感で、柔軟な思考力を持ち合わせていることが多いです。

一方で、グローバル人材の活用には言語や文化の壁、時差、法制度の違いなど、克服すべき課題も存在します。これらの課題に対しては、効果的なコミュニケーション手段の確立、文化理解のためのトレーニング、適切なプロジェクト管理ツールの導入などが解決策となり得ます。

日本企業にとっては、このようなグローバル人材を積極的に活用することで、イノベーションの促進や国際競争力の向上につながる可能性があります。同時に、日本人エンジニアにとっても、グローバルな環境での協働は新たな学びや成長の機会となるでしょう。

今後は、国内外の人材をバランスよく組み合わせ、それぞれの強みを最大限に活かすことができる体制づくりが、システム開発プロジェクトの成功の鍵となっていくと考えられます。

まとめ

今やオフショア開発は人月単価を安く抑えるといった活用ではなく、優秀な設計者、つまり広義での技術者を確保することが大切です。それもいずれ枯渇することを考えると、いち早くソフトウェア大国であるベトナムのオフショア開発を取り入れるべきでしょう。

ユーザー側の要望を上手に開発者に伝える方法は設計能力によるものがあります。上流工程から情報技術を専門に学んできたベトナム人に開発をお願いするときに重要になるのは、IT用語を用いたコミュニケーションです。DX研究室ではIT Comtorについての解説をたくさんしています。ITコミュニケーターを専門だからできるオフショア開発にコミュニケーションをプラスすることでどれくらい生産性向上とコストダウンが図れるか、シミュレーターを制作しましたので、ぜひご活用ください。