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オフショア開発の失敗は日本側マネジメントのせいだった!?

新興国の人件費上昇

近年、新興国の経済発展が目覚ましく、ベトナム国内でも人件費が急上昇しています。2023年現在、ベトナム人SEの平均人月単価は約50万円となっており、これは10年前の2倍以上の数字です。

この人件費の上昇には、ベトナムの経済成長が大きく影響しています。ベトナムは近年、ASEANの経済大国として急成長しており、IT産業も活況を呈しています。そのため、ITエンジニアの需要が高まり、それに伴って人件費が上昇しているのです。

また、円安の影響も単価差縮小に拍車をかけています。2023年現在、1ドルは約135円と、10年前の約100円から35円も円安が進んでいるため、ベトナム人SEの単価を円で換算すると、実質的にさらに上昇していることになります。

このように、ベトナム人SEと日本人SEの単価差は縮小の一途をたどっており、今後もベトナムの経済成長と円安が続くと、単価差はさらに縮小し、なくなる可能性も考えられます。

単価差縮小は、企業にとってコスト削減のメリットをもたらしますが、それだけに留まらないメリットとして、ベトナム人SEのスキル向上が進んでいることが挙げられます。ベトナムではIT教育が充実しており、優秀なIT人材が育っているため、ベトナム人SEのスキルと経験は、日本人SEと遜色ないものになってきています。また、ベトナムと日本は時差が1時間と小さいため、コミュニケーションや納期管理がしやすいというメリットもあります。

一方、単価差縮小にはデメリットもあります。
まず、ベトナム人SEの採用競争が激化する可能性です。コスト削減を重視する企業が増えれば、ベトナム人SEの需要が高まり、採用競争は激化するでしょう。また、ベトナム人SEの単価が上がれば、日本企業のオフショア開発のメリットが薄れる可能性もあります。

マネジメントの改善

これまで、ベトナムIT人材は物価差によって安価に調達できるため、日本側マネジメントが上手くなくてもプロジェクトの採算が合うというメリットがありました。しかし、このメリットは、今後徐々に薄れていくと考えられます。

その理由として以下の2つが挙げられます。

1.ベトナムの経済成長に伴う物価上昇
ベトナムの経済は近年急速に成長しており、それに伴って物価も上昇しています。そのため、ベトナムIT人材の単価も上昇し、安価な労働力というメリットが薄れつつあります。

2.日本のIT人材の賃金上昇
日本のIT人材の賃金も近年上昇しています。そのため、ベトナムIT人材と日本のIT人材の賃金差が縮小しており、日本側マネジメントの改善が求められるようになっています。

今後、ベトナムIT人材を活用していくためには、ベトナムIT人材のスキル・能力を正しく把握することや、ベトナムIT人材の育成に投資することが重要です。

ベトナムIT人材のスキル・能力は、日本IT人材と比較して未熟な部分もあります。ベトナムIT人材のスキル・能力を正しく把握し、適切なマネジメントを行う必要があるため、OJTやOff-JTなどの育成プログラムを実施し、ベトナムIT人材の成長を促進することが重要です。また、ベトナムIT人材は、日本IT人材と比較してモチベーションが低い傾向にあります。そのため、ベトナムIT人材のモチベーションを高める仕組みを構築する必要があります。

オフショア開発のコスト上昇

安価だったオフショア開発のバッファが無くなった今、マネジメントが杜撰であれば直接プロジェクト予算が浪費されることになります。オフショア開発とは、開発業務を海外の企業や個人に委託する開発手法です。近年は、海外の労働コストの低さや、24時間体制での開発が可能であることなどのメリットから、オフショア開発を利用する企業が増えています。

オフショア開発では、開発コストを抑えるために、見積もり時に予備費(バッファ)を設けることが一般的です。バッファは、開発中に発生する予期せぬ問題や、仕様変更などの対応に備えて設けられます。しかし、近年は、オフショア開発のコストも上昇傾向にあり、バッファを十分に確保することが難しくなってきています。また、海外の労働コストの低下も鈍化しており、オフショア開発によるコスト削減効果も相対的に小さくなっています。

そのため、オフショア開発を利用する企業は、これまで以上にマネジメントの徹底が求められています。マネジメントが杜撰であると、バッファが不足し、直接プロジェクト予算が浪費されることになります。

オフショア開発は、コスト削減や開発スピードの向上などのメリットがある一方で、マネジメントが難しいという課題もあります。マネジメントを徹底することで、オフショア開発のメリットを最大限に引き出し、プロジェクトの成功につなげることが重要です。以下に、オフショア開発におけるマネジメントの具体的なポイントを3つ示します。

1.プロジェクトの初期段階で、十分な要件定義と見積もりを行う
オフショア開発では、海外の企業や個人が開発を行うため、コミュニケーションのミスや認識のズレが発生する可能性があります。そのため、プロジェクトの初期段階で、十分な要件定義と見積もりを行うことが重要です。

2.開発プロセスを明確化し、進捗管理を徹底する
オフショア開発では、開発プロセスを明確化し、進捗管理を徹底することが重要です。開発プロセスを明確にすることで、開発の進捗状況を把握し、問題が発生した場合に迅速に対応することができます。進捗管理では、定期的に進捗状況をチェックし、遅延や問題が発生していないか確認します。また、問題が発生した場合は、速やかに対策を講じます。

3.コミュニケーションを密に取り、問題発生の早期発見と対応を行う
オフショア開発では、コミュニケーションを密に取り、問題発生の早期発見と対応を行うことが重要です。海外の企業や個人とのコミュニケーションには、文化や価値観の違いを理解することが重要です。

マネジメントこそ成功の鍵

開発ベンダーが、ベトナム人であれ、日本人であれ、結局はプロジェクトを進行するマネージャーの能力が高くなければ、成功することはありません。

開発プロジェクトは、技術的な課題だけでなく、スケジュールや予算、コミュニケーションなどの様々な課題が複雑に絡み合います。これらの課題を解決し、プロジェクトを成功に導くためには、次のようなマネージャーの優れた能力が必要不可欠です。

・技術力
・プロジェクトマネジメントスキル
・コミュニケーションスキル
・リーダーシップ

ベトナムの開発ベンダーは、近年、技術力や品質が向上し、日本企業の間で注目を集めています。しかし、技術力や品質だけでは、プロジェクトを成功に導くことは難しく、マネージャーの能力が伴わなければ、プロジェクトは失敗に終わる可能性が高いです。

ベトナムの開発ベンダーが、日本の開発ベンダーと競争するためには、マネージャーの能力を向上させることが重要です。そのためには、マネージャーの育成を強化するとともに、プロジェクトマネジメントの知識やスキルを習得するための機会を提供する必要があります。具体的には、以下の取り組みが考えられます。

・マネージャー向けの研修の実施
・マネージャーの海外研修の実施
・プロジェクトマネジメントの知識やスキルを習得するための社内制度の整備

まとめ

いかがでしたか。

IT人材の調達という方法だけではベトナムIT企業を使いこなすことはできません。これは、日本の中小IT企業と同じ課題です。人材不足と同時にマネジメントを変えていかなければという姿勢が大切です。

IT人材不足にまったなし!今始めないと乗り遅れてしまうベトナムITオフショアを上手に取り込むにはコツが必要です。アタラキシアDXには10年以上のノウハウがあります。2025年の崖を一緒に乗り越えましょう。