技術的負債は、経営課題

技術的負債とは、ソフトウェア開発において、短期的な利益のために、長期的に必要な品質や保守性を犠牲にして、その場しのぎの解決策を採用することで生じる、将来的な追加コストやリスクを指します。具体的な例としては、以下のようなものが挙げられます。

・複雑で難解なコード
・メンテナンスが困難な設計
・セキュリティーホール
・旧式の技術やツールの使用

技術的負債は、知識や経験がないとその存在に気づきにくいという特徴があります。そのため、何か問題が起きてからでないと、その深刻さに気づかず、放置してしまうケースも少なくありません。

そして、技術的負債は時間とともにどんどん大きくなっていきます。これは、技術の進歩やビジネス環境の変化によって、システムの要件や仕様が変化していくためです。また、技術的負債を抱えたシステムは、変更や拡張が困難になるため、ビジネスの成長や競争力の維持にも支障をきたす可能性があります。

技術的負債の解消には、リファクタリングと呼ばれる作業が必要です。リファクタリングとは、コードの品質や保守性を向上させるための作業であり、既存のコードに手を加えて、よりわかりやすく、メンテナンスしやすいコードに書き直すものです。リファクタリングには、時間とコストがかかりますが、技術的負債を解消することで、以下のメリットが得られます。

・システムのパフォーマンスや信頼性の向上
・変更や拡張の容易化
・セキュリティーリスクの低減
・開発コストの削減

ヤフーの場合、1990年代に急速な成長を遂げたことで、技術的負債が蓄積していきました。このため、2000年代には、技術的負債の解消に注力し、20年間かけて、約100億円の投資を行いました。技術的負債は、ソフトウェア開発において避けて通れない課題です。しかし、その解消に早期に取り組むことで、将来的なリスクを回避し、ビジネスの成長や競争力維持につなげることができます。

以下に、技術的負債の解消に取り組むためのポイントをまとめます。

・技術的負債の存在を認識し、そのリスクを理解する。
・技術的負債の程度を把握し、優先順位をつける。
・リファクタリングなどの技術的負債の解消方法を検討する。
・技術的負債の解消に必要な予算と人員を確保する。

技術的負債の解消は、ソフトウェア開発の品質や保守性を向上させるための重要な取り組みです。ソフトウェア開発に携わるすべての人が、この課題に真摯に取り組んでいくことが求められます。

見えない負債

技術的負債は、顕在化しないため軽視されがちであり、特に、営業出身の経営者などの非エンジニア出身の経営者、リーダーにとっては、技術的負債の大きさが数字で表れないため、大きな問題を引き起こします。技術的負債が溜まっていくと、以下の問題が発生します。

・ソフトウェアのパフォーマンスが低下し、顧客からのクレームが増える。
・障害の発生頻度が高まり、サービス停止や復旧に時間とコストがかかる。
・新機能の追加や変更が難しくなり、競合他社に遅れをとる。
・エンジニアが技術的負債の解消に追われ、新規開発や改善に手が回らなくなる。
・エンジニアのモチベーションが低下し、離職率が上がる。

これらの問題は、企業の収益や競争力に悪影響を及ぼす可能性があります。

メガベンチャーや技術に明るい経営陣がいる場合は、技術的負債の重要性を理解しており、テックリード、EM、ミドルマネジメントのエンジニアがおり、組織的に技術的負債の解消に取り組める予算を計画し、技術的、組織的にアプローチしています。

具体的には、以下の取り組みを行っています。

技術的負債の可視化
技術的負債の種類や程度を把握すること。そのためには、技術的負債の調査や評価を行う必要がある。

技術的負債の優先順位付け
技術的負債の中から、優先して解消すべきものを選定することである。そのためには、技術的負債の影響度やコストを評価する必要がある。

技術的負債の解消のための予算の確保
技術的負債の解消に必要なコストを確保すること。

技術的負債の解消のための組織体制の整備
技術的負債の解消を推進するための組織体制を整えることである。

技術的負債は、放置しておくと、企業の成長や競争力を阻害する大きな問題となる大きなリスクです。そのため、技術的負債の重要性を理解し、適切に管理することが重要であり、技術的負債の軽視は決して許されません。

リプレイスは負債清算

システムのリプレイスは、技術的負債の一括返済です。技術的負債とは、システムの開発や運用・保守において、効率やコストを重視した結果、システムが複雑化し、運用・保守にかかるコストや開発工数が肥大化してしまうことを指します。

システムが古くなるにつれて、技術的負債は蓄積されていき、システムのパフォーマンスが低下したり、セキュリティリスクが高まったりします。また、システムの改修や拡張が難しくなり、事業の成長に支障をきたすこともあります。

システムのリプレイスは、技術的負債を一括で返済する機会ですが、システムの規模や複雑さに応じて、多額の費用がかかる場合があるため、システムのリプレイスを検討する際には、技術的負債の量や種類を正確に把握し、適切なタイミングでリプレイスを実施することが重要です。

スムーズなシステムのリプレイスやバージョンアップを行っている企業は、定期的な小出し返済をしていると考えられ、具体的には、以下の取り組みが挙げられます。

・システムの設計や開発において、技術的負債を発生させないようにする
・システムの運用・保守において、技術的負債を蓄積させないようにする
・定期的にシステムの見直しや評価を行い、必要に応じてリファクタリングやリアーキテクティングを行う

これらの取り組みにより、技術的負債の量や種類を最小限に抑えることができ、システムのリプレイスやバージョンアップにかかるコストを削減することができます。
以下に、技術的負債を発生させないようにする具体的な取り組み例を挙げます。

・コードの可読性や保守性を高める
・テストケースを充実させる
・設計書やドキュメントを整備する
・バージョン管理を徹底する
・定期的なレビューや検査を行う

これらの取り組みにより、システムの複雑化を抑制し、運用・保守の容易性を高めることができます。

システムのリプレイスは、決して避けられないコストです。しかし、技術的負債を発生させないようにする取り組みを行うことで、システムのリプレイスやバージョンアップにかかるコストを削減し、事業の成長を支えることができます。

小出し返済は根本解決に

技術的負債とは、システムの品質や保守性を低下させる要因であり、コードの複雑性や重複、テストの不足、ドキュメントの不備など、システムの運用を続ける限り、さまざまな形で現れます。これは、新機能の追加や仕様変更によって、既存のコードが変更されたり、新たな問題が発生したりするからです。

技術的負債を放置すると、システムのパフォーマンスや信頼性が低下し、運用コストの増加や障害の発生につながります。そのため、定期的に技術的負債を返済し、システムの品質を維持することが重要です。

定期的な小出し返済とは、日常のシステムのメンテナンスによって、技術的負債を少しずつ返済していく方法です。具体的には、以下のような作業が含まれます。

・バグの修正
・パフォーマンスの改善
・セキュリティの強化
・テストの追加
・ドキュメントの更新

運用保守と呼ばれるこれらの作業は、システムを安定的に稼働させるために不可欠です。しかし、修正や要望などを指示していることが多い場合は、技術的負債の返済につながっていない可能性があります。

その理由は、以下の2つです。

１．修正や要望は、既存のコードや仕様を変更するものであり、技術的負債を増加させる可能性がある。
２．修正や要望は、短期的な視点に基づいて行われるものであり、技術的負債の根本的な解決にはつながらない。

そのため、定期的な小出し返済を行うためには、以下の2点に注意する必要があります。

１．技術的負債の返済を目的とした作業を優先する。
２．技術的負債の根本的な解決を目指す。

技術的負債の返済を目的とした作業としては、以下のようなものが挙げられます。

・コードのクリーンアップ
・テストの自動化
・アーキテクチャの改善
・ドキュメントの標準化

これらの作業は、技術的負債の根本的な解決につながるものであり、システムの品質を長期的に向上させることができます。

あたかも技術的負債は積みあがっていないように感じられる理由は、以下の2つです。

１．修正や要望によって、システムの表面的な問題は解決される。
２．技術的負債の根本的な解決には時間とコストがかかるため、短期的には効果が見えにくい。

しかし、技術的負債は、そのまま放置しておくと、必ずしも表面的な問題だけに留まりません。パフォーマンスの低下や障害の発生など、深刻な問題を引き起こす可能性があります。

そのため、定期的な小出し返済によって、技術的負債の根本的な解決を目指すことが重要です。定期的な小出し返済を行うためには、技術的負債の返済を目的とした作業を優先し、技術的負債の根本的な解決を目指す必要があります。

まとめ

いかがでしたか。
技術的負債を返済の方向にもっていくには第三者視点が必須となります。また、見えないことを調査するうえで、既存ベンダーの協力も必要になることがありますので、競合他社よりも信用のおけるIT知識が豊富な第三者が望ましいでしょう。

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