交通違反をしたら罰金です。サッカーで手を使ったら退場です。小学生でも校則を破ったら怒られます。つい先日、東京オリンピックでも参加選手の行動ルールをまとめた「プレーブック」が公表されて、違反者には、制裁金、参加資格の剝奪、国外退去が科されることが明記されたという。このように禁止行為には、それなりのペナルティがあるのに、なぜ仕事にはペナルティがないのか。そう考えた時に、そもそも仕事にはルールすら存在しないことに疑問を持ちました。こんなにも多くの人が入り交じりながら仕事をしているのに、ルールがなくても平然とやっていることが凄いことなのかもしれない、いや平然とやっていない人も沢山いるんだと思います。
就業規則は、会社に属する人の規約であり、日本のプロ野球で言えばNPBに属しているようなものかと。野球をプレーするにはNPBでも少年野球でも共通のルールがありますが、仕事をプレーするうえでのルールは規定されていません。
地位が高い人ほど、こだわりに近い自分ルールを設けていますが、あくまで個人的なものです。他人に迷惑をかけなければ、個々人の独自ルールで自由に仕事をして良いのですが、集団で仕事する上で、他人に迷惑をかける、全体を非効率にさせることは避けたいことであり、それこそが仕事のルールに相当するものなのではないでしょうか。
これまで3つの会社で働き、独立後もいろいろな会社でシステム開発プロジェクトの仕事に従事し、そのほとんどはプロジェクトベースなので、これまで1000人以上、もっと多いかもしれない人と仕事で関わってきましたが、知らずに人に迷惑をかけている人が多いことに驚きます。
このような人は、仕事のルールを守らないのではなくて、ルール自体を知らない、迷惑をかけている自覚がないのかもしれないと思っています。技術があればあるほど、ルールを知らない人を、勿体ないと思ってしまいます。
今回は、若干おせっかいではありますが、個人的に仕事のルールにしたいことを書いていきます。
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仕事のルールとは
仕事のルールは、はじめての相手と名刺交換することでも、45度の角度でお辞儀することでも、電話やメールで毎回「お世話になっております」と言うことでもありません。
サッカーは手を使ってはいけないルールです。それ以外にも、危険な行為や遅延に繋がることも禁止事項としてルールに定められています。このルールを無視して自由にプレーはできませんし、相手に怪我をさせてしまう可能性もあります。
一方、仕事にルールは存在しないため、自由にプレー出来てしまいます。物理的に危険を及ぼすことはあまりないですが、周りの人に迷惑をかけることはあります。
会社によって、職種や地位によって、どんな仕事でも、変わらず行うこと、そして頻度高く他人と関わることについては、仕事の共通ルールを定めても良いのではないでしょうか。
ペナルティ
昔、会議に遅れたら1分100円払うというペナルティを設けて、貯まったお金を皆で飲みに行く時の補填にしていたことがありました。今では、こんなことをしたら叱られてしまうのでしょうか。でもペナルティがなければルールを守る必要性は薄れてしまいます。ルールとペナルティは一体で考えるべきですが、反感も多そうですし、働き方も多様なので、仕事においては難しいのかもしれません。
仮にルールとセットでペナルティを設定できたら、ルールは守られるのでしょうか?
ここで一つ問題なのは、サッカーにしても野球にして交通ルールにしても、取り締まる役割の人がいます。その人がルール違反を見つけてペナルティを科すため、仕事でこの取り締まりをどうするかという問題があります。AIが人に変わって取り締まってくれたら、この問題はなくなるかもしれません。
そうなったとしても完全にルールが守られることは無いでしょう。
赤信号を無視した暴走族は、赤信号では止まるというルールを知ったうえで、信号無視をしているのです。暴走族に赤信号では止まりなさいと言っているのと同様に、ルールを知っているのに守らない人に、ルールを守れと言っても無駄です。仕事も一緒で、仕事のルールを知っているのに守らない人は少なからずいるはずで、いくらペナルティを科したとしても変わるとも思えません。
ルールとスキル
スポーツは、ルールを守って競技することが約束事であり、ルール違反をすると警告をもらうか、退場になり、酷い場合には、選手生命を失うことすらあります。一方、スキルは、スポーツで勝つための技術です。
ルールを知っていて初めて競技に参加することができ、その上で、勝負に勝つためにスキルを身に着けるのです。
これは仕事でも同様で、まずはルールで、その上にスキルがあります。極論すると、いくら高いスキルがあったとしても、ルールを知らなければ、そのスキルを活かす場に立てないことにもなります。ルールを守った上でスキルを発揮することが、スポーツでも仕事でも活躍するためには必要なことだと思います。
中まとめ
仕事にルールがないことに疑問を感じてもらい、ルールを設けるべきか、どのようなルールが良いか、ペナルティは必要か、などを考えることによって、少しでも他人に迷惑をかけずに仕事をするきっかけになれば幸いです。
ここから先は、たいそうな課題提起から一転しょぼい現実的な内容になるので、仕事で他人に迷惑をかけていない人は、読み飛ばしてもらって構いません。
これまで様々なクライアントと多くのエンジニアと仕事をしてきて感じることは、仕事で当たり前に守って欲しい事を、どこの現場へ行っても言わなければいけないことです。
ここから先は、多くの仕事で共通して行われる会議とメールに関して、どこのプロジェクトでも必ず言うこと、つまりルール化したいことを、あくまで個人的な意見として書いていきます。
会議とメール以外にも、コミュニケーションの手段としては電話もありますが、今時もはや電話は迷惑でしかないので、原則禁止のルールで良いと思っています。
かんたんイラスト(記事を読む時間のない人へ)
仕事ルール(案):会議編
リモートワークが当たり前になってくると、ちょっと聞くという行為がオンラインになり、チャットやweb会議が主流のコミュニケーションになってきます。スケジュールを開放していると、隙間時間にボコボコ会議を入れられて、自分の時間は見る見るうちに削られてしまいます。オンライン会議が増えてくると、会議の準備も不十分になりがちですし、移動時間がないため頭の切り替えもスムースにできない事もあります。
そんな時代だからこそ、会議にルールを設けたいです。
<会議設定>
・タイトル
会議を設定する際、何の会議かわかるようにタイトルを付けてほしいです。ボコボコと何の会議かわからないものを勝手にスケジュールに入れられるのは、本当に迷惑です。設定する人は、わかっているのかもしれないですが、受ける方は、その背景を知らないこともありますし、時間がたてば忘れてしまうこともあります。
もし設定する本人が会議の目的をわかっていないのだとすると、それ自体が問題です。
また、設定する人は、一つのプロジェクトに関わっているだけかもしれませんが、複数のプロジェクトに関わっている人もいるのです。
タイトルにプロジェクト名を入れる、会議の趣旨として、報連相、依頼事項、お願い、ディスカッション、ブレストくらいも付けてください。
(タイトルの例)
【αシステム再構築PJT】品質向上対策のディスカッション
【βシステム開発PJT】進捗状況の報告
【ΣリニューアルPJT】見積りの承認依頼
・アジェンダ
会議案内の文面にはアジェンダを書いてください。必ず。
会議のための資料が必要か不要かに関係なく、準備は必要です。せめて会議5分前には頭の切り替えはしたいですし、あわよくば、こういうやり取りになったら、こんな返しをしてやるぞとヒーローになることを狙っているかもしれません。そのためにも、アジェンダは必要です。ヒーローになることを狙っていたのに、出番がなかったら活躍できません。
アジェンダには、誰から誰へのトピックかがわかることも大切です。
トピックに自分の名前が名指しでなければ最悪欠席しても良いと考えることもできます。別に重要な会議を入れたい時に、この会議って何ですか? 参加は必須ですか?とかいちいち聞かなければならないことは、とても非効率です。
(アジェンダの例)
1.要件定義の進め方について相談 20分 佐藤(→鈴木課長)
2.重要課題の調査結果報告 10分 田中(→松本部長)
3.出勤形態についての事務連絡 5分 加藤(→全員)
<発言する時>
・指名
会社によってはファシリテーション教育も行われていたりしますが、難しいことは言いません。ただ一つ、オンライン会議では、指名してから喋ってください。
誰に向けた発言かわからず漂う沈黙の時間は無駄です。感想を言う会でもなければ、個人のつぶやきを聞く会でもないのですから、必ず誰に向けた発言かわかるように指名して発言することもルールにしたいです。物理的な部屋で行う会議の場合には、目線でなんとなく誰に向けた発言かわかりましたが、オンライン会議ではわかりません。
この記事を書いてて、昔に読んだおちまさとさんの「会議質」という本を思い出しました。タイトルのキャッチーさもさることながら内容も今の時代でも通じる内容だったように思います。
仕事ルール(案):メール編
メールの冒頭に「お世話になっております。」と書くか書かないか巷で議論になったりしてますが、正直どっちでも良いです。どうせ読み飛ばすので。実はメールのやり取りにおいて、気が付かないうちに相手に迷惑をかけていることがあるので、その点についてルール化したい気持ちを書きます。
<送信する時>
・指名
宛先が一人なら不要ですが、複数名が宛先に入っているなら、かならず指名して欲しいです。誰に求めているのかわからないのは無用な頭を使わないといけなくて迷惑です。自分が指名されていなければ、無視することもあります。
・報連相
タイトルか本文冒頭に、報連相のどれなのか書いてください。
大量にメールを受けとる人にとっては、メールを読むのも結構な時間とエネルギーが必要なので、メールの本文を読む前に優先付けと心構えをしたいのです。
・短文
出来るだけ短い文章で端的に書いてほしいです。です・ます、接続語も文字数が増えるだけなので、何なら箇条書きでも良いです。
・目的
指示だけ書いてあると、意図せず問題を引き起こす可能性があります。例えば、「こんなデータを抽出して欲しい」と指示をすると、大量に不要なデータが含まれていたり、暗黙的に条件を絞り込まれていたりするかもしれません。「こういう事に使いたいので」という目的を書くことによって、認識齟齬や余計なやり取りは減らせます。
・期日
返事を求める場合は、必ず期日を書くこと、これこそルールにしたいこと筆頭です。出来れば、その期日が過ぎるとどんなことになるのかも書いてあった方が良いです。
これまでに上げた指名、報連相、短文、目的はメール本文を読めば、おそらくわかりますが、期日は、書いてなければいくら読んでも絶対にわかりません。
システム開発プロジェクトのように、スケジュールに基づいて進める仕事においては、特に大切なことなので、この後に少し掘り下げます。
<返信する時>
・返事はすぐにする
これだけです。すぐというのは、ほぼ即答です。
どう返事をしたら良いか考えている、答えがわかってからとか、そんな理由は不要です。調べてから返信するのではなく、いったんすぐに返信が欲しいです。「確認します」「ちょっと調べる必要があります。」これだけでも良いのです。今どきはチャットやLINEなどリアルタイムなコミュニケーションが当たり前なので、メールでも返事がなければ、既読スルーと同じです。
メールした方は、頭の中にその事柄が残っているので、即答があるとコミュニケーションのリズムが良く、気持ちよく仕事ができますが、ちょっと間が空くと、その件を思い出すのに頭を使わなければならず、効率が悪くなってしまいます。
期日を伝えない依頼は、ただの迷惑
先日お願いしたのに全然返答がない、もう少し待ってみようと1日、2日待ってみたけど、やはりやってくれている気配がない。そんなとき、あなたならどうしますか?
A:「先日お願いした○○の件、どうなってますか?」
B:「え?まだやってないですけど・・・、いつまでに必要なんですか?」
A:「えっ?やってないですか。そうですねー、できれば明日中にお願いできますか?」
B:「えー、今日明日は時間ないんだよなぁー」
A:「すみません、出来れば明日中になんとかお願いできませんか」
B:「それなら最初に依頼するときに明日までって言ってくださいよ!」
このやり取りは、何なんでしょうか。すごく無駄です。これがリモートワークだと、メールで何往復するかチャットで時間が占有されてしまいます。このようなやり取りはいまだに仕事の現場で、よく見ます。
依頼する際に、明確に「期日」を伝えていなかったことがいけないのです。
突然「明日中」なんて言われる方も気分が良くないですし、そんなの無理だと言われてしまう方も困ります。
そもそも、期日を設定していない依頼は、やっていなくても文句はいえません。
期日を伝えることの大切さを理解しているのに、言えない人は優しい性格なのでしょうか。あるいは「そんなの無理です」と突き返されるのを恐れているのでしょうか。指示するのが偉そうだと思われたくないのでしょうか。
このような個人の感情や性格に左右されるからこそ、ルール化したいと思ってしまいます。
また、先の段取りを考えていないために「期日」を設定できない人もいるので、このような人にもルール化は有効です。
期日を言えない人は優しい性格なのかもしれませんが、相手にとってはぜんぜん優しくありません。お願いされる人にとっては、期日があれば、それまでの予定のやりくりや仕事の組み換えなどを考えられますが、突然明日までと言われたらやりくりの余地はなく迷惑でしかありません。
まとめ
たらたらと仕事ルール(案)を書いてしまいましたが、簡単に言ってしまえば、5W1Hの徹底ですね。
雑なコミュニケーションは相手の時間を奪います。雑とは、5W1Hの何かが欠落しているのです。雑なコミュニケーションによって、メールの往復やら不用な時間が取られることに、あまりに無頓着な人が多いことに驚きます。
相手がある仕事では、自分への優しさではなく、相手への優しさを意識して仕事に取り組んだら、気持ちよく仕事ができると思うのです。
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