
影に潜む「便利」の正体/現場主導のIT利用とは?
シャドーITとは、企業の情報システム部門が認知・管理していない状態で、現場の判断によって導入・利用されるIT資源のことを指します。具体的には、LINEやGoogleドライブ、Excelマクロなど、日常的な業務改善の一環として自然発生的に使われるものが該当します。企業としての統制が効かない一方、業務上の即応性や利便性を目的とした「現場目線の工夫」であり、単なるルール違反とは言い切れない側面もあります。果たして、これを単純に「排除すべき野良アプリ」として一括りにするのは妥当なのでしょうか。
効率化のジレンマ
現場がシャドーITに走る背景には、既存システムの使い勝手の悪さや、IT部門の対応スピードの遅さがあります。業務は待ったなしの状況が多く、迅速な判断や情報共有のために、自分たちで利用しやすいITツールを導入するのは自然な流れです。たとえば、共有フォルダの代わりにGoogleドライブを使ったり、複雑な申請フローをExcelマクロで簡略化するなど、業務効率化に資する使い方も多く見受けられます。業務の現場がスピードと柔軟性を求める限り、IT部門の枠組みに収まらないツール利用は、これからも繰り返されるでしょう。
便利さの代償は大きい
しかし、シャドーITには重大な問題点も存在します。まず、セキュリティが確保されていないツールの使用は、情報漏洩やマルウェア感染などのリスクを増加させます。また、IT部門の管理下にないため、データの一元管理が困難となり、連携の取れないシステム群が乱立し、非効率を生むこともあります。最悪の場合、企業全体のコンプライアンス違反や内部統制の破綻を招きかねません。つまり、現場の利便性の裏には、企業としてのリスクが常に潜んでいるという現実を忘れてはならないのです。
創造的破壊としての存在
一方で、シャドーITの存在は、現場が自らITを活用しようとする創造的な姿勢の現れでもあります。とくに最近では、DXの進展とともに「市民開発」や「ローコード開発」といった、現場主導のIT活用が注目を集めています。つまり、これまで否定されてきたシャドーITも、企業の変革を後押しする可能性を秘めた存在なのです。IT部門がすべてを統制するのではなく、現場と協業しながらガバナンスを効かせるという視点に立てば、シャドーITを排除すべき“野良”ではなく、むしろ包摂すべき“創造”へと再定義することができるでしょう。
まとめ
現場の柔軟性と全社最適の両立には、両者を理解する経営の舵取りが不可欠です。経営層が「排除」ではなく「共存」の設計に踏み出すことが、企業のDXを一歩進める鍵となります。
多くの会社は管理体制が強かったり、現場が極端に強かったりして、間に挟まれてしまうITベンダーやIT部門はどちらかの言いなりになるより他ありませんでした。しかし、本当に企業の未来を考えるのであれば、現場が求める柔軟性と全社最適を目指す管理体制のバランスを求めなければなりません。しかも、それができるのは絶対権限を持つ経営者や経営陣になります。アタラキシアDXでは、経営者層へのアドバイスも積極的に行っています!