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外資コンサルでよく聞く”マインド”の正体(前編)

彼は「マインドが低い」、彼女は「マインドが高い」。
最近ではあまり聞かれないかもしれませんが、20年前の外資コンサル会社では、”マインド”という言葉が良く使われていました。
ちょっと前にテレビ番組で、”コク”の正確な意味はわからないけど、「コクがあって旨い」「コクが足りない」とかなんとなく”コク”という言葉を使って味を表現したらアウトという企画がありました。
”マインド”という言葉もなんとなくわかるけど正確にはよくわからず、当時は雰囲気でわかった気になっていたように思います。
今更ですが、その正体を解き明かしていこうと思います。

マインドの正体

コンサル時代に良く言われた”マインド”は、プロフェッショナルを問われた言葉だったと思います。仕事でお金をもらっていることがプロだとすると仕事に就いている人は皆プロフェッショナルとなりますが、”マインド”の意味は、時間の対価として報酬を得るのではなく成果に対して報酬を得るという考え方だと思います。
つまり「彼女はマインドが高い」とは、「彼女は成果に対して報酬を得るという考え方で仕事に取り組んでいる」という意味に置き換えられるのではないでしょうか。

2000年にアクセンチュアに入った当時は、常にコンサルマインドを求められました。「働いた時間でお金もらっているわけじゃないから」と上司から言われても、クライアントに請求する報酬は予定稼働時間で算出していたので、心の中では結局時間だよねと思っていました。
当時マインドと同じように良く言われた言葉がコミットメントです。今では、ライザップのおかげで”必ず達成する”という意味で市民権を得ていますが、当時は、この言葉の定義もあいまいなままなんとなく責任感と理解していました。
このコンサルマインドとコミットメントを求められ続けることで、いつのまにか気が付いたら高いプロ意識が身についていたと、振り返ると今は思います。

今の時代に求められるプロ意識

今の時代、ワークライフバランスが叫ばれていますが、残業しないことがバランスだとは思いません。10年間だけ我武者羅に働き稼ぐだけ稼いで早期リタイヤするのもバランスのとり方だし、プロスポーツ選手のように24時間365日考えられない努力をして、とてつもない報酬を稼ぐのもバランスを取っているとも言えます。
フリーランスも当たり前に認められるようになってきましたが、自由を求めてフリーランスになった人は、成果を出せなければ次は無いというプレッシャーを感じているはずです。
サラリーマンも以前は、どれだけ時間を使っても良い成果を出せば認められたかもしれませんが、働き方改革やワークライフバランスによって働く時間が制限されている今では、決められた時間の中で成果を出すプロ意識が求められています。
つまり今の時代、時間ではなく成果で報酬を得るという意識が大切で、それはコンサルだけではなく、多くの働く人に求められているのだと思います。

期待値コントロール

「クライアントの期待値をコントロールしろ」これもまたコンサル時代に印象のある言葉のひとつです。高いマインドで成果を追求すると言っても限界もあるし、頂上が標高何メートルかもわかりません。そのためコンサル会社には、クライアントの期待値をゴールと見なして期待値以下なら不合格、期待値通りなら普通、期待値以上なら合格という評価の考え方があります。
期待値をコントロールするとは、クライアントがすごく高い成果を期待していたら、現実的なところに目線を向かせろという意味であり、それによって期待値以上のゴールを決めて合格評価を得るという馬鹿げた発想です。
自分にとって理想が高いと思っていても、コンサルやSIerを使い倒してきたクライアントにとっては高い理想ではないかもしれません。
プロの世界では、負荷をかけて高難度を普通のことにしてしまう練習は常識です。マラソンの高地トレーニングしかり、イチロー選手が小学生の頃にバッティングセンターで普通の速球に満足できずにより速い球の出る専用スプリングで打っていたのは有名な逸話です。
今でも言われているかはわかりませんが、クライアントの期待値を下げるというのは全くナンセンスだと当時も今も思っています。クライアントの期待値をコントロールするくらいなら、最善の努力に全エネルギーを注ぎ、それで結果が出なければ自分の実力不足か限界を超えてしまったということであり、その考え方の方がよっぽどプロフェッショナルだと思います。

後編の予告

評価が高くても役職が上がると期待通りの働きが出来ない人がいます。その理由は、自分一人で成果を出そうとすることにあるかもしれません。
役職が上がれば部下ができ、さらに上にいけば部下がより増えていくので、個人ではなく組織としての活躍が求められます。組織として同じ速度で同じ方向を向いてゴールを目指すためにはマインドをチームに浸透させることが必要になります。
当時のアクセンチュアでは会社の文化になっていたため言うまでもなくコンサルマインドは浸透していましたが、今は個人を尊重する重要性が高くなっているのでチームで統一のマインドを持つのが難しくなっているかもしれません。
独立してからは単独でプロジェクトにPMとして参画し、マルチベンダーにフリーランスもいるような体制で推進しなければならず、自分のマインドを浸透させる難しさをとても感じています。押し付けるのではなく、迎合するのでもなく、背中で見せるしかないと思っています。

プロジェクトは時計のようなものです。PMは時計の歯車のひとつであり、コア部品です。PMが動かなければ周りは動いてくれません。PMがゆっくり動けば周りもゆっくりになり、早く動き過ぎれば回転についてこられない歯車もあるかもしれません。まずPMが動く、そして適切な速度で動く、これがPMの基本的なマインドです。
後編は、システム開発プロジェクトのPMに必要なマインドとは何かについて具体的に書いていこうと思います。

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