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オフショア開発の新たな展開とITコミュニケーターの必要性
現在、日本企業がベトナムを含む海外の開発会社と協力してオフショア開発を行う流れが増えています。過去10年間で、ベトナム自体が珍しい存在ではなくなり、海外の開発会社がプロジェクトに参加するのは当たり前の状況となりました。 しかし、この状況下で単に「人件費の安いベトナム」に発注するというコストダウンの視点では、現在の状況には適していないのが実情です。 もしコストカットが目的であれば、システム開発ではなく、比較的単純で反復的な業務を対象とするBPO（ビジネス・プロセス・アウトソーシング）を検討すべきです。
言語と文化の壁を乗り越えるITコミュニケーターの役割
それでは、BPOではないシステム開発においてはどのようなアプローチが求められるのでしょうか？その答えは、ITコミュニケーター(IT Comtor)を用意することです。ITコミュニケーターは、日本語とベトナム語の両方を使いこなせるITに詳しいポジションであり、ブリッジエンジニアにも似ています。しかし、ITコミュニケーターは言葉の問題だけでなく、仕事のやり方や文化の違いによる課題をブリッジします。
例えば、日本のソフトウェア開発では受託開発が一般的であり、開発プロジェクトの進捗管理においては報連相が重視されます。また、ボトムアップ型のアプローチが好まれ、開発現場の個々の創意工夫や意見が重要視されます。しかし、ベトナムにおける受託開発は成果物の完成を約束する契約であり（日本の受託開発も契約上はこうなのですが）、成果物の進捗について日本の発注元から頻繁に報告を求められることに対してベトナムの開発者は反発を感じることがあります。また、指示命令がはっきりしているベトナムの組織では、開発現場において意見を求めつつも、その結果に責任を開発現場に求める日本のマネジメントスタイルは、無責任に映ることもあるかもしれません。
ITコミュニケーターの役割とスキル要件
こうした課題を乗り越えるためには、ITコミュニケーターの存在が不可欠です。彼らは単なる言語の通訳だけでなく、両国の開発文化の違いを理解し、適切なコミュニケーションを取る能力を持っています。ITコミュニケーターは、日本のソフトウェア開発の特徴や要件を正確に把握し、ベトナムの開発者に伝えることで、円滑な連携を実現します。彼らは言葉や文化の壁を乗り越え、双方の開発チームを結びつけ、プロジェクトの成果を最大化する役割を果たすのです。
ITコミュニケーターには、ソフトウェア開発の知識に加えて、優れたコミュニケーション能力や対人スキルが求められます。彼らは単に言葉を通訳するだけでなく、双方の文化や仕事のやり方を理解し、適切な形で情報を伝えます。また、柔軟性と問題解決能力も重要です。彼らは状況に応じて適切な対応を取り、課題を解決するための努力を惜しまない必要があります。
ブリッジエンジニアとITコミュニケーターの違い
ブリッジエンジニアは、主にプログラミング技術を持ち、異なる技術領域やプロジェクト間でのコミュニケーションと連携を支援することに特化しています。技術スタック、プログラミング言語、アーキテクチャに精通しており、プロジェクトの開発チームとインフラストラクチャチーム、または異なる技術部門との連携を円滑に行い、情報の共有や問題の解決をサポートします。ブリッジエンジニアは技術的な課題や制約を理解し、それを他のチームやステークホルダーに理解可能な形で伝える能力が重要です。また、システム全体のアーキテクチャやデザインを理解し、異なる要素を統合するための技術的な戦略を策定します。それに加えて日本語とベトナム語を使うことができます。
ITコミュニケーターは、主に非プログラミングに焦点を当てています。彼らは技術的な専門知識を持ちながらも、主な役割は技術的な情報やプロジェクトに関するコミュニケーションを円滑に行うことです。プレゼンテーションやプロジェクトマネジメントなどの能力が重要であり、プロジェクトの進行状況、リスク、問題点を関係者やステークホルダーにわかりやすく報告し、コミュニケーションのボトルネックを解消します。彼らはビジネス部門と技術部門との橋渡しを行い、双方の理解を促進し、ビジネスニーズと技術的な要件を理解し、両者の間で適切なバランスを取る役割を果たします。要件を日本語で理解できるため要件定義やシステムテストなどのフェーズでも活躍します。その能力でPMを補佐することも多いようです。
まとめ
ベトナムオフショア開発において、ITコミュニケーターは非常に重要な存在です。彼らの存在は単なるコストダウンだけでなく、効果的なシステム開発を実現するために不可欠です。ブリッジエンジニアの人件費は安くはなく、市場には数が限られています。そこで、コミュニケーションに長けたITコミュニケーターを採用し、技術に関しては、技術力の高い専門的なシステムエンジニアに頼るといった適材適所をお勧めします。多くの日系開発企業が、優れたITコミュニケーターを最重要の人的資源として認識してきています。オフショア開発プロジェクトの成功はコミュニケーションにかかっているといっても過言ではありません。ITコミュニケーターの重要性を理解し、適切な人材を配置することで、オフショア開発プロジェクトの効率化と成功につなげることができます。
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